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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

区立幼稚園の廃園計画

 9日本会議は定例会の最終日。議案の議決です。すべての議案が本会議で採決となるわけではなく、全会一致のもの、あるいは少数意見として各委員会の委員長報告の中に記録をとどめることで了解の取れた議案については、本会議での採決はありません。逆に、あらためて本会議の場で、つまり全議員の明示的な意思表示によって議決を行うべきと議員から求めがあった議案については、通常は討論ののち採決されます。今の区議会では、委員会での結論と本会議での最終議決が異なることは考えられませんが、会派の構成が変わってくれば、委員会での結論が本会議でひっくり返されるというようなことも、起こってきます。また、たとえ結論は変わらなくても、本会議の正式な記録の中に会派としての立場や論点、そして賛否の意思を刻み込んでおくのは大切なことでもあります。

 昨日、採決なったのは、予算案、介護保険と国民健康保険の条例改正案、幼稚園「適正配置」計画に関する陳情、オリンピック招致決議です。私は、幼稚園の陳情について討論に立ちました。「適正配置」という名の廃園計画に反対の立場からの討論です。保護者の皆さんの頑張りに触発され、示唆されて、たいへん多くのことを考え学ばせてもらったテーマでした。私なりの総括を込めて討論を行いました。全文を転載します。

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 生活者ネット・市民の声・ふくしフォーラムを代表して、陳情第65,66号の採択を求める立場から討論を行います。
 この二つの陳情は、いずれも区立幼稚園のいわゆる「適正配置」計画の見直しを求めるものです。この計画は、「適正配置」と銘打たれてはいるものの、基本的には区立幼稚園の縮小・後退に画期をなすものと言わざるを得ません。
練馬区には5つの区立幼稚園があります。これら5園は、当初は地域的偏在を解消する、新たに開発される光が丘地区の就園ニーズにこたえるなど、いわば私立を中心とした幼稚園教育を地域的に補完する意味合いを持って整備されました。
 


 しかし、開設から20年の歴史を経て、区立幼稚園は区立幼稚園としての固有の魅力と意義を持つようになりました。通園バスもないのにほとんど練馬区全域から子どもたちが通ってきている事実こそ、区立幼稚園がその地域性とは別な魅力と意義を持っていることの証左でもあります。
 教育委員会の「適正配置実施計画案」は、区立幼稚園を「公平性や平等性が確保されている公共の教育機関」と明記しています。幼保連携、障害児保育、さらには所得の低い世帯も低廉な費用で受けられる保育…。まさに、「公共の教育機関」として、区立幼稚園は私立にない役割と個性を発揮してきました。区立幼稚園は明らかにその役割を変えて来たのであり、私立幼稚園を補完するだけでなく、私立幼稚園では必ずしもかなえられない役割を担い、あるいはさらに幼稚園教育の先導者としても期待されるようになりました。今や区立と私立は、相互に刺激し合い連携すべきパートナーであると言うべきです。
 ところが、今回の「適正配置」計画は、「公共の教育機関」としての区立幼稚園のこうした独自の役割を軽視し、区立を今なお私立の補完物、いわば控え選手と見なす姿勢に貫かれています。長年の懸案であり、また区民からの希望もたいへん強い3年保育に対して、きわめて消極的な姿勢に終始したことはその象徴というべきです。
 なぜ区立幼稚園では3年保育をやらないのか。
 教育委員会は、「私立幼稚園を幼稚園教育の基本としている」、私立幼稚園が「慎重に対応」するよう求めている、「私立幼稚園の運営に影響を与える3年保育は避けるべき」と答えました。なぜ、何を根拠に、私立幼稚園は「慎重に」対応することを求めているのでしょうか。
一般質問でも触れましたが、光が丘地区についてみれば、周辺の私立幼稚園11園の充員率はすでに97%にもなり、送迎を行っていないために特に充員率の低い1園を除けば、100%を超える過員状態です。しかも、これらの大半が30人以上の学級です。そもそも、全国的に見れば、私立幼稚園の充員率はおおむね7割であり、光が丘地区の私立幼稚園はあまりに多くの子どもたちを受け入れていると言えます。私立幼稚園への経営的なダメージを避けつつ3年保育を導入することは可能であり、むしろそれを機会に、私立幼稚園が区立なみの学級編成に移行すること、それを支援することこそ、幼稚園教育の充実という点では積極的な取り組みとなるはずです。
 そもそも、区立幼稚園の3年保育は、区立に通っている子どもたちへの区の責務でもあります。区立だから、なぜ2年保育に甘んじなければならないのか。私立幼稚園への経営的な配慮を理由に区立の子どもたちが3年保育を受けられないという事態は、教育における公平・平等という点からは許容できることではありません。とりわけ障害児の場合は、区立に大きく依存しており、一つ間違えれば障害児は障害児であるがゆえに3年保育を保障されないという深刻な議論すら起きかねない事態です。私立幼稚園の皆さんが、こうした事態を良しとするとは、私には思えません。
 今回の「適正配置」の根底にあるのは、教育的な価値観や構想ではなく、財政的な配慮、私立幼稚園の意向、跡施設の転用に対する思惑など、非教育的な利害や発想です。
 3年保育というきわめて基本的で正当な教育的要求に対して、私立幼稚園の明示的でもなく、根拠も示されない「意向」を盾にこれをさえぎる姿勢は、教育委員会が子どもたちの教育的ニーズとは違うものを優先していることを象徴的に教えています。だからこそ、子どもたちや保護者への配慮を欠いた対応も生まれてしまったのです。この「適正配置」計画については、その進め方に、保護者を中心として強い反発と批判の声が上がりましたが、誰のための「適正配置」か、誰に顔を向けた「適正配置」かが、まさに鋭く問われていたのです。
 私たちは、何よりも子どもたちの教育環境の改善・充実とすべての幼稚園教育の底上げを進めるために、区立幼稚園の縮小・廃止ではなく、その積極的な位置づけと充実こそが必要であると主張するものです。保護者をはじめとした区民の切実な思いに応え、当該陳情を採択すべきことを訴え、討論とします。

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