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「4定」のしめくくり

 「4定」、区議会第4回定例会が今日、閉会しました。予想以上に議論を呼ぶテーマが多い議会でしたが、最終日の本会議では南田中図書館の指定管理者を選ぶ議案と、同じく区立特別養護老人ホームなどの指定管理者を選ぶ議案に対して反対討論を行いました。少し長くなりますが、それぞれの討論の全文を掲載します。
 まずは図書館から。

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 議案162号 「南田中図書館の指定管理者の指定について」に対し、反対の立場から討論を行います。
 先の第2回定例会において、私は、区立図書館に指定管理を導入しようとする教育委員会の姿勢を厳しく批判し、南田中図書館を直営で開館するよう強く求めました。今回、指定管理者の選定議案を審査する中で、図書館を指定管理に移すことがどれほどおろかで危ういことであったかをあらためて感じています。
 そもそも、教育委員会は、区立図書館を本当に大切に守り育てたいと考えているのでしょうか。


 公立図書館としての公的な性格を守り、公正で質の高い図書館運営を図るうえでのよりどころは何より「人」の力を置いてありません。図書館の質を決めるのは、やはり「人」です。本を選ぶのも、企画を組むのも、利用者の声を受け止めるのも、「人」です。そして、図書館を担う「人」の中心は、言うまでもなく館長です。どんな館長が、この南田中図書館を管理するのか。
 指定管理者を募集・選定するにあたって、教育委員会は図書館長の要件として,ささやかな実務経験や司書資格に加えて
・図書館経営についてのビジョンを持ち、人格的に優れ、リーダーシップを有すること
・学校支援、環境、情報通信技術の活用等に対して十分な力量および見識を有すること
を挙げました。もし図書館長が「図書館経営についてのビジョンを持ち、人格的に優れ、リーダーシップを有する」人であったなら、指定管理に対する私の不安もいくらかは解消されたでしょう。学校支援等々について「十分な力量および見識を有する」のであれば、区立図書館の新しい展開の一助となるかもしれません。しかし、これらは、当然ながら、館長となるべき人が具体的に明らかとなり、その人を直接、ヒアリングしなければ決してわからないことです。ところが、館長候補者が誰なのか、どんな人が館長になるのか、教育委員会は確かめもしないで業者を選んだというのです。
 ということは、議会はどうすればよいのでしょう? 実際にどんな人が館長になるのかさえ確かめられていないのにこの選定結果を承認するとすれば、それは、館長が示すべき「ビジョン」や「リーダーシップ」等々を事業者に白紙委任するにひとしい行為です。大切な区立図書館の管理運営を、こんなに安易に、無責任に取り扱うことは許されません。
 指定管理者候補となっている事業者「図書館流通センター」が提出した公募書類を見て、私は驚きました。この事業者がみずから開発し販売している本の流通・管理システムを導入するという、まるで顧客獲得のプレゼンテーションさながらの提案が次々と出てくるのです。率直に言って、区立図書館を新たな事業展開と利益拡大の場として徹底して利用しようという意志は明瞭に伝わってきますが、一方で、図書館の利用者、区民の自主的な文化・学習活動の拠点として、どんな図書館事業を展開していくかについては具体的で斬新な提案はほとんどないのです。
 しかし、それはある意味で当然のことでした。選定された事業者は、もともとは日本図書館協会の外郭として設立された半ば公的な団体であったようですが、しかし、その後は次々と資本関係を広げ、今年には最大手の印刷会社の連結子会社となり、いまや純然たる営利企業として書籍の出版・流通業界の一角を占めるまでとなっています。
 図書館で購入する書籍は全館あわせて年間で10万冊を超えます。南田中図書館の場合は新設ですから、当初の購入図書数だけで数万冊にのぼります。書籍の流通販売に携わる事業者であれば、図書の販売だけでなく付帯的な管理業務も含め、指定管理をみずからのビジネスチャンスととらえるのはごくごく自然なことです。
 もちろん、たとえ直営の図書館であっても、こうした事業者の力と能力を借りること抜きには効率的な運営はあり得ないでしょう。しかし、問題は、この事業者が自ら図書館の管理主体となることであり、公平・公平を旨とし、住民の権利を支えるべき公立図書館の管理そのものが営利追求の手段となってよいのかということです。
 付け加えれば、教育委員会は、当該事業者が他企業の子会社となったことを知りませんでした。事業者の経営の安定性や永続性、あるいは事業者の適格性を判断するうえで、経営上の支配関係や財務連結関係のチェックは欠かすことのできない要件であるはずです。他の企業の傘下に入ったことも知らないで、法人の経営環境が適切に評価されたと言えるでしょうか。
 南田中図書館指定管理者候補の選定は、大変ルーズで安易であったと言わざるをえません。図書館に指定管理を導入することは慎重に、と国も国会も言い、区議会でも繰り返し指摘されても、教育委員会が何も学ぼうとしないのは甚だ残念と言わざるを得ません。公共図書館事業に対する誇りと見識を取り戻すよう、教育委員会に強く自省を求めて、討論とします。

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