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「民間準拠」

 区職員の労働条件にかかわる議案が、いくつか出されています。
 公務員は、法律で争議権が制限されています。その“代償措置”として、地方公務員の場合には人事委員会がおかれ、給与や労働時間など、労働者の基本的な労働条件に関する事柄は人事委員会の意見を聞くという仕組みになっています。
 では、人事委員会は、何を根拠に公務員の給与や労働時間に対する意見を言うのか。その最大の論拠として使われるのが「民間準拠」です。つまり、民間の水準に準拠して公務員の労働条件を定めていくという考え方です。そして、その際に持ち出されるのが、「職種別民間給与実態調査」です。
 調査の対象となったのは、23区内にある企業規模50人以上でかつ事業所規模50人以上の958事業所。この1000近い事業所に働く約177万人の労働者について、4万人強を抽出して調査するというものです。問題は、二つあります。まず、対象者の範囲が狭いこと。50人未満の事業所は対象となっていませんし、また正社員のみを対象としており、急増している非正規雇用は除外しています。そして、もう一つは、この調査がひどく大企業に偏っているということです。
 対象となった177万人のうち、実に55%が1000人以上の規模の会社の人たちです。100人~1000人未満の会社の労働者を加えると93.2%に達し、50人以上100人未満の会社はわずか6%ちょっとしかありません。たとえば、練馬区内にある企業のほぼ7割が50人未満という数字と照らし合わせると、人事委員会が依拠する調査は、実は「民間」をいくつものフィルターをかけて映し出しているものでしかないと思えてなりません。
 労働者が健康で人間らしい労働条件を保証されることはとても大切なことであり、時短も、給与の引き上げも、大切な課題であると思います。しかし、それは、公務員だけの課題ではなく、官民問わず、すべての労働者が保証されるべきことです。少なくとも、民間の労働者の劣悪な労働条件に目をつぶって、公務員だけが安定した、恵まれた労働条件を享受してよいということにはなりません。民間の労働者の労働条件の向上にもつながるようなあり方、民間の労働者とともに生活を向上させていくあり方。少なくともそれは、民間労働者のごくごく一部を切り取った数字をもとに「民間準拠」の大義名分を立て、それに寄りかかることではないはずです。
 付け加えれば、議員の報酬等も、区の公務員の給与との比較を通して、実は間接的にこの実態調査を一つの根拠としています。議員の地位、待遇もまた、誠実に検証されなければならないことですね。

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