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“NOxに抱かれた町”…

 練馬清掃工場から排出されるNox(窒素酸化物)が年170t…この数字の持つ意味はなかなかリアリティを持っては伝わってきません。何しろ相手は気体、「気体の重さって?!」というところから始まってもおかしくない話ですから。
 しかし、たとえばこんな数字と比べてみてください。東京都には、「窒素酸化物総量削減計画」というのがあります。国の特別措置法に基づいて自動車から出る窒素酸化物(NOx)やディーゼル粉じんなどの総量を減らしていくための計画なのですが、この計画によると、都内全域で出る窒素酸化物のうち自動車以外の排出源からのものが年約3万tだそうです。ということは…清掃工場は23区だけで20ヶ所あります。練馬工場の数字を元に単純に計算すると、この清掃工場だけで170t×20ヶ所=3400t。つまり、自動車を除けば、全都から出る窒素酸化物のなんと1割以上を23区内の清掃工場だけで吐き出していることになります。

 もうひとつ、数字を。外環道が南に延びる計画があります。この計画では、練馬工場から西へ1kmも行かないところに大きな換気所ができる予定になっています。この換気所からは、東名道までの外環本線のトンネル内を走行する車、1日10万台と言われる車から出る排気ガス全体のほぼ半分、NOxにして年約100tが集中的に排気されます。大泉ジャンクション周辺に年100tもの窒素酸化物が降り注ぐと聞いて私などは仰天してしまったのですが、練馬清掃工場の煙突から出るNOxは、大泉の換気所どころか中央道や東名道の換気所も合わせた量、つまり本線を通る10万台分の排気ガスの全体に匹敵する量なのです。煙突1本で10万台…

 もう少し数字を紹介しましょう。外環延伸によって都心や幹線道路の渋滞が解消されることによる効果のひとつとして、窒素酸化物の排出量が削減されるということを国は繰り返し語ってきましたが、この削減効果というのが、1都3県全体で300t~400tだそうです。これでも「130万~180万台のトラックに相当する」らしいのですが、しかし、1都3県全体での削減量のスケールがせいぜい数百tのレベルなのです。がんばって外環道を整備して東京・神奈川・埼玉・千葉で削減できるNox量が300~400t、一方で大泉の換気所だけから吐き出されるNOxが100t、清掃工場の煙突1本から170t…これでは、大泉周辺はまるで“NOxに抱かれた町”ではありませんか?

 清掃工場といえばダイオキシン、というほどに、清掃工場の大気環境対策に対する関心はもっぱらダイオキシンに向けられてきたきらいがあります。しかし、清掃工場は、窒素酸化物の生成・排出を通して、もしかしたらダイオキシンに劣らないくらい重い負荷を環境に与えているのかもしれません。NOxチェック、NOx要注意、です。

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