Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「災害時要援護者」

 練馬区は、「介護が必要な高齢者や一人暮らし高齢者、障害のある方などで、情報の収集や避難などの災害時の対応に支援が必要な方々」、いわゆる「災害時要援護者」の登録を進めています。昨年度は、ひとり暮らし高齢者実態調査と合わせてこの登録を勧奨してきたこともあり、登録人数は急増、今や27,000人に達しています。これだけ登録が広がると、当然、問われるようになります――「登録したら、何をしてもらえるんだろう?」「登録した人に、何をしてあげればいいんだろう?」と。
 災害時に「要援護者」に対して誰が、どんな支援を行うか。区が、大きな期待を寄せているのが防災会などの「区民防災組織」です。今、区は、この区民防災組織に要援護者名簿を預け、連携して支援に当たる「災害時要援護者支援事業」を進めています。要綱によると、事業は

(1) 区が、別に定める練馬区災害時要援護者登録制度により、登録を希望する要援護者の個人情報を把握し、災害時要援護者名簿(以下「名簿」という。)として要援護者の情報を区民防災組織等へ提供すること。
(2) 区民防災組織等が、通常の防災訓練の他、提供された名簿に基づいて災害時要援護者支援の防災訓練、要援護者マップの作成などを行うこと。
(3) 区および区民防災組織等が、災害の発生が予想されるとき、または、災害発生時に要援護者の安否確認、情報伝達、救出救護、避難誘導などの活動を行うこと。
(4) 区が、区民防災組織等に対し、必要な助言や支援を行うこと。

とされています。名簿を預けること自体の是非がずいぶんと議論されてきた事業ですが、今や区民防災組織は、マップ作りに始まって、災害時の安否確認、避難誘導、救出救護など、多様な、そして責任の重い役割を期待されているのです。はたして、防災組織にこうした役割を期待してよいのか、それは可能なことなのか。名簿に登録した要援護者に対する支援は、そもそも誰が責任を負うべきなのか…。
 決算質疑の「保健福祉費」のところでは、この「災害時要援護者」の問題も取り上げました。

■池尻成二委員 それから232ページ、災害時要援護者対策費について伺います。ここではこのところではひとり暮らし高齢者実態調査が、この災害時要援護者対策費に含まれているということで、これはこの調査をきっかけに、要援護者名簿への登録を勧奨なさってきたということが、大きなご趣旨だろうと思います。その効果もあったということで、名簿登録者の総数を見ますと、昨年7月では4,324人だったのが、この6月では2万6,891人と、6倍以上に増えております。


 この名簿、昨年度だと思いますけれども、地域の区民防災組織にお預けをするということも含めて、取り組みを進めていらっしゃるようですが、1防災組織当たりの人数で見ると、昨年は概ね15人だったのが、今年は100人ということで、非常に大きく増えているということがあるようです。ここまで増えてくると、要援護者名簿をどう活用するかと、あるいは実際に登録された要援護者の方とどう向き合うかということを各防災組織が真剣に問われるところが出てきているだろうと思うのですけれども、ある防災関係者の方から、今年かなり唐突に名簿が届いたと。極めて人数が多くなってきてどう対応していいか非常に不安であるといったご意見をいただきました。
 そこでまず伺いたいのですけれども、災害時に登録した要援護者の支援のために区民防災組織はどのような役割を期待されているのか、申しわけありません、簡潔に教えていただけますか。

防災課長 防災会につきましては、災害時に要援護者の安否確認、あるいは状況によっては救出救護、そういったものについてご協力いただくという形になっております。
■池尻成二委員 いただいた資料の中に『まちの防災みまもり袋作成の手引』というのがありまして、この中に災害発生時の防災組織の役割というのが書いてあります。今課長からもご答弁いただきましたけれども、情報伝達は防災会が行う。安否確認についても防災会が行う。救出救護についても地域の防災会が中心となる。避難誘導も防災会が中心となって民生・児童委員、近隣住民が連携協力する、こういう形になっておりまして、現実に要援護者の災害時の支援については、防災組織が非常に大きな役割を期待されているということがあるかと思います。ただ現実に、地域の防災組織がこういった役割にこたえられる条件、体制を待っているかとなると、私は甚だ疑問でして、実際に今の防災組織でこの名簿を受け取っているのは4割程度だそうです。それ以外の防災祖織は名簿をまだ預かっていない。これもまたこうした防災組織の側の責任に対するご不安等々もあるのではなかろうかと思います。
 そこで伺いたいのですけれども、こうした実際の要援護者対策、要援護者の支援事業の位置づけを見る限り、名簿を預かる防災会の負担と責任というのは大変重いと感じられます。である以上、区としても名簿を渡しておしまいということであってはいけないし、あり方について改めて議論、検討すべきところに来ていると思います。区民防災組織に積極的な役割を果たしていただくことは大変大切であるし、ぜひそうしていただきたいけれども、とりわけ要援護者については、区民防災祖織に依存しないで、区みずから責任のある支援の体制を構築していくべきではなかろうかと思いますけれども、ご意見をお聞かせください。

■防災課長 要援護者名簿につきましては、今お話ありましたように、防災会にも提供しておりますが、警察あるいは消防、そういった防災機関にも提供しているというところがあります。ですから災害時にはそういった名簿を持ったさまざまな機関が協力して要援護者の対応に当たるということになると思います。ただ、防災機関も同時多発的に災害が起こった場合には、なかなかすべてを回るということができませんので、そういった意味で防災会の力が大変重要になってくると思います。今ご指摘がありましたように、私ども名簿をお渡しするだけではなくて、今後こういった現状も踏まえまして、積極的に防災会に対して支援をしていきたいということを考えております。その支援の仕方につきましては、懇切丁寧な防災会の要援護者に対する取り組み等々、今後検討してまいりたいと思っているところでございます。
■池尻成二委員 ぜひ防災組織そのものの人的な体制なり活動基盤をよく検討のうえ、特に当該の組織とは十分なコミュニケーションをとって、この名簿の活用についてはご配慮いただきたいと思います。

 大震災のような災害時に対応できる支援体制をつくることは、なかなか容易なことではありません。何が起こるか、誰がどうなるかわからない。そして、誰もが被災しうるのが震災です。よほど懐の深い、重層的な体制が日ごろから準備されていなければ、要援護者=災害弱者に対する適切な支援は困難です。区民防災組織の協力は不可欠であり、また貴重であるとしても、過大な期待と安易な依存はまちがいだと、私は思います。“非常時”の体制、とりわけ支援の必要な人たちを支える体制は、区が主体的な責任を負い、組織的にも財政的にもしっかりとした手当をする中で組み立てられるべきです。

コメント