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“投資シフト”と「行政改革」

 定例会最終日、予算案に反対して討論を行いました。新年度の予算案をどう見るか。私はそこに、ある明確な志向性、いわば“投資シフト”ともいうべきものを見て取りました。保育園委託化をはじめとした「行政改革」を通して、志村区政がめざしてきたものはなんなのか。少し長くなりますが、一つの視点として、読んでみてください。

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 一般会計ならびに国保、介護保険、後期高齢者医療、老人医療の各特別会計予算案に反対して、討論を行います。
 新年度予算には、さまざまな充実・新規事業が盛り込まれています。それらの事業の一つ一つをとれば、支持できるもの、評価できるものもあります。目立った変化はなくても、しかし、しっかりと継続されていくこと自体が大切な事業は、さらに数多くあります。誰が区長になっても引き受けなければならない現実はあり、そうした意味では、予算には100点満点も、逆に0点もありえません。
 問題は、区政がどこを向いているか、どちらに歩を進めているか、です。この点で、新年度予算は、二期目を迎えた志村区政の意志と方向性がはっきりと現れたものであると考えます。それは、ひとことでいえば“投資シフト”、つまり限られた一般財源を普通建設事業に重点的に投入していく指向です。


 新年度予算の際立った特徴は、投資的経費の急増です。投資的経費の大半を占める普通建設事業は、今年度に比べて75億円、37%の大幅増です。しかも、注意すべきは、この投資的経費の財源の3分の2は一般財源であり、まちづくり交付金などの国費、都費はわずか15%でしかありません。普通建設事業に充当される一般財源は、今年度比で40億円もの増加です。
 こうした一般財源のなかには、都からの財政調整で補填されるものもありますが、しかしその多くが、区民の税負担増、そして「委託化・民営化」を柱とした行政改革によって生み出されたものであることは明らかです。
 新しい中期計画によれば、これからの3年間の投資的経費の総額は1,115億円にものぼり、今年度までの3年間の総額635億円と比べてなんと75%の急増です。区政・区財政の“投資シフト”は今後もさらに強まることは確実であり、それは志村区政2期目の本質であるといっても過言ではありません。
 施設の建設も、学校の建替えも、道路も、その多くが意義ある事業であることは否定しません。しかし、何を優先し、どこに、どのくらい力を振り向けるかによって、まさに区政はその姿勢を問われます。そして、区政は今、“投資シフト”の陰で、区民の生活と思いの中に大きな傷跡を残そうとしています。その象徴が、保育園の「委託化」です。
 「委託化」の対象となった保育園の説明会に、私も何度か参加しました。そのたびに異様なほどの強い印象とともに確認したのは、委託化を進めようとする区のきわめて強引な姿勢です。とりわけ所管部の責任者の口からしばしば飛び出した、保護者の思いを冷たく突き放す言葉、居直りとしか取れない発言の数々は驚くべきものでした。どれだけ多くの保護者と子どもたちがそのことによって傷ついたかを忘れることができません。しかもその挙句が、光が丘第四保育園の公募の失敗です。ときに極めて楽観的な見通しまで振りまきながら、保護者の強い異論を押し切り、あれだけ強引に公募を進めてきたのに、結局、区立保育園を受託するにふさわしい事業者を確保できなかった責任を、いったい誰が、どう取るのでしょうか。
 16園の保育園委託化計画は10年間の累積で28億円もの財政効果がある、と区は言います。委託に伴う混乱と保護者や子どもたちが強いられる負担に目をつむれば、そして徹底して安上がりの保育士に置き換えれば、なるほどそうした計算も成り立つかもしれません。しかし、少なくとも現行の保育水準を維持するという公約を反古にしない限り、そうしたやり方はきわめて無理のあるものだということを今回の事態は象徴しています。しかも、そこでしゃにむに浮かせた財源が、区のさまざまな建設事業に消えていくとしたら、保護者の不信と怒りはどれほどでしょう。
 特別会計に触れれば、今回の予算案では、国保、老人医療も含め、後期高齢者医療制度の導入に対応する予算案となっています。この後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者をまるで社会の除け者扱いにし、急騰する保険料を資格証や特別徴収を使って取り立てるという過酷なシステムに支えられているものであり、日本の医療保障、社会保障の根幹を見失わせるものです。それにもかかわらず、あくまでこの制度を是とする区の姿勢は、容認できるものではありません。また、この間、介護保険において区みずから進めてきた生活援助や外出介助などの利用制限もほんとうにひどいものであり、早急な是正が必要です。
 予算は、区政の顔つきを正直に映し出します。新年度予算が描き出す区政の顔は、残念ながら、生きにくさがつのる日々の暮らしのなかで区民が感じている不安から目をそむけています。あらためて当該予算案に反対の意志を表明し、市民の声ねりまの討論とします。

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