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憲法

 今日5月3日は憲法記念日。日本国憲法が施行された日です。
 記念日に促されるように、この時期、いつも憲法を読み直してみます。今年は、とくに27条と28条が気になって仕方ありません。
 第27条には、こうあります。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

 誰だって(よほどの資産家ならともかく)働くことが「義務」であることはいつも思い知らされています。何しろ、働かなくちゃ食べていけない…でも、働くことは「権利」もあるんです。
 実は、去年のこの時期、児童労働との関連でこの同じ条文を紹介しました。でも、今年は、連日のように報道される失業・解雇の嵐を前に、書いています。働くことが「権利」である社会で、働く場を失い、いや奪われるということが、これほどためらいもなく、大規模に許されてよいのだろうか… いいわけありませんね。働くことが義務であるだけでなく「権利」でもある社会、「権利」にふさわしい人間的な働き方が誰にも保証される社会。それは、憲法の求める原則であるだけでなく、社会変革の喫緊の課題です。
 もうひとつの28条は、いわゆる労働基本権を定めたものです。

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

 団結権や団体交渉権、あるいは争議権を含めた団体行動権が、憲法に直接、根拠を置く権利だということを、今、どれだけの労働者が知っているでしょうか。
 厚生労働省が紹介しているある調査では、この憲法上の規定を知っている勤労者は30%、とくに派遣や日雇いでは18%、アルバイトやパートでは10%しかいなかったそうです。もっとも知らされるべき、そして知ることでもっとも保護されるであろう労働者が、憲法に定められた権利の存在すら知らないという現実。これほど憲法の空洞化、規範としての憲法の形骸化を物語るものはありません。
 憲法が掲げた理想は、それぞれに歴史的・思想的な背景を持って生まれてきたものであり、決して特異なものでも珍しいものでもありませんが、それでも大切な価値と意義を持っています。憲法を読むたびに、そのことは実感します。そこには、一般の法律につきものの難解さや形式主義とは違って、議論や意欲や熱意を呼び覚ます刺激がたくさん含まれています。しかし、その憲法が、現実の前に--現実の統治機構や経済システムや富の権力の前に、膝を屈し、顔を隠してしまっている。憲法の民主的・平和主義的・自治的な原理に力と魂を込めなおすために、私たちはたくさんの努力を求められているんだと、覚悟と決意を新たにした一日でした。

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