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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

定例会、終了

 第2回定例会が終わりました。
 17日間の会期、最終日の日程も、大半が人事でした。議長・副議長の「辞任」を受ける形で新しい議長には自民の柴崎議員、副議長は公明の田代議員を選挙で選出。その他、議員選任の監査委員、各委員会の正副委員長の選任、そして役職交代にともなう議席替えまで、型どおりの手続きが進んでいきます。この定例会そのものといってよいような本会議でした。
 唯一、各会派が意見をぶつけ合ったのが、図書館条例の「改正」案。焦点となったのは指定管理導入の是非で、民主とオンブズマンを除くすべての会派が討論に立ち、採決となりました。結果は、自民・公明・民主・共産の賛成多数で可決。ちょっと意外な賛否の構成でしたが、いずれにしても私は、大局を揺るがすどころかほとんど一指も触れることができず、自分の立場を表明するのがせいぜいという有り様でした。これが、この定例会、唯一の仕事らしい仕事と言ってもよいくらいで、いったいこの議会は何だったんだろうというフラストレーションと無力感に襲われています。図書館問題に熱心に取り組んできた区民の皆さんには、本当に申し訳ない。

 それでも、討論を再録させて下さい。せめてもの抵抗の記録として…

図書館条例「改正」案に対する反対討論
 議案55号「練馬区立図書館条例の一部を改正する条例」に反対の立場から、討論を行います。
 この議案は、新たに建設中の南田中図書館を条例に位置づけるとともに、その管理を指定管理者に委ねるための規定の整備を行うものです。
 それにしても、なぜ指定管理なのでしょうか。


 確かに、区は、委託化・民営化実施計画などで「民間にできるものは民間に」という原則を掲げ、施設管理については指定管理を活用することとしています。しかし、同時に区は、この方針は個々の施設に即して適用されるべきものであり、「指定管理者制度を適用するか、直営として個別に業務の一部委託を行っていくか」は具体的に検討・判断するとしてきました。そして、いったんは教育委員会は、図書館については直営の元での委託の拡大という選択をし、カウンター業務などの部分的な委託を進めてきたのです。
 つい2年ほど前、教育委員会は、図書館業務のうち企画調整、蔵書管理や複雑事例のレファレンス、関係機関・団体支援事業などは直営とし、委託するのは「補助的、作業的業務」のみとすると決めました。そして、「管理運営業務の基本については直営でやることがふさわしいという判断を持っているのか」と私が問うたのに対して、当時の生涯学習部長は「当分の間、直営で」とはっきりと答弁したのです。
 それが、なぜここに来て急に指定管理に転換したのでしょうか?
 新設の図書館だから、というのでしょうか。しかし、問題は図書館とその業務の評価であり、新設であれ既設であれ、図書館は図書館です。学校支援モデル事業があるからでしょうか。しかし、この事業は図書館の基幹的な業務の一つであり、やがてはすべての図書館で取り組むべき事業です。南田中図書館だけの問題ではありません。
 教育委員会は、明らかに、区立図書館全般への指定管理導入に大きく踵を転じようとしています。そして、これだけ大きな転換であるにもかかわらず、図書館に指定管理制度を導入することの是非、とくにその弊害について、慎重かつ十分な検討がなされていないこと。これが、私がこの議案に反対する最大の理由です。
 図書館は、指定管理についてはもっとも慎重に検討されるべき施設の一つです。なぜなら、図書館は国民の知る権利、思想信条の基本に関わる事業を担う施設、まさに教育施設の一つであるからです。学びや表現に関わる自由や中立性への配慮、施設やスタッフに求められる幅広い見識と教育的力量など、求められる課題は深く広く、その管理運営を営利企業を含む民間に委ねるに当たって整理すべき論点は数多くあります。だからこそ、政府でさえもが指定管理の導入に対して慎重な判断を求めているのです。
 図書館法等改正案審議の際、文部科学大臣がこう答弁しています。「公立図書館への指定管理者制度の導入率というのはまだ1.8%なんですね。その最大の理由は、…だいたい指定期間が短期であるために、…長期的視野に立った運営というものが図書館ということになじまないというか難しいということ、また職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、こういう問題が指摘されておるわけでございます。…図書館に指定管理者制度を導入されるということであれば、…しっかりとそういった懸念が起こらないようにしていただいた上で導入をしていただくということが大事なのではないかなと考えております。」
 「図書館には指定管理はなじまない」――これが、政府の認識なのです。この法案の採決に当たって、衆参両院も「指定管理者制度導入による弊害について十分配慮すること」を求める附帯決議を、全会派一致で採択しています。ところが、指定管理導入には慎重に、と政府も国会も声をそろえているまさにその時に、わが練馬区教育委員会は指定管理の弊害はないと言い放つ。国と区の、この大きく深刻なギャップは何なのでしょうか。
 指定管理導入を決めるにあたって、教育委員会は庁内で検討委員会を持ちました。しかし、この委員会では、経費節減の試算や利用料金制の導入などは熱心に検討されていますが、たとえば指定管理の元での人材の確保、長期的な図書館運営の在り方、選書ルールの見直し、そして個人情報管理などは課題として意識された形跡すらありません。
 指定管理の導入にあたってこれほど慎重な判断を要する施設はないのに、これほど安易かつずさんにその導入が決定された例を私は区政の中でも他に知りません。図書館行政における教育委員会の姿勢は、当座の財源確保に目を奪われ、首尾一貫性を欠き、説明責任を全うせず、そして理念と熟慮を欠いたという点で、およそ非教育的なものです。区民待望の12館目の図書館が、性急で拙速な「行政改革」の実験場とされることははなはだ嘆かわしいことであり、南田中図書館を直営で開館することを強く求めて討論を終わります。

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