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「母子手帳」に、たくさんの広告がついてきた…(完)

「母子手帳」を配布する際に、たくさんの企業広告を同梱するようになった経緯は、こんな感じです。
●2007年度~ 練馬区は、マタニティマークのストラップを母子手帳と一緒に配布する取り組みを開始。決算額は2013年度で661,290円
●2014年度 「マタニティマークストラップ無償提供事業」を開始。株式会社Visual Innovationと協定書を締結
●2015年度 事業者を公募で募集、2014年度と同じ事業者を選定

もともとは、母子手帳と一緒にマタニティマークの入ったストラップを配布してきたところから始まります。写真のストラップです。経費は毎年、だいたい70万円弱。配布個数は7000個程度。2013年度の決算では、1個94円でした。
このストラップ配布は、それ自体、たくさんの自治体がやっていることであり、母子手帳と一緒に区が配布してもとくに違和感もないものでした。ところが、2014年度、区はこのストラップ配布の事業の在り方を大きく変えます。ストラップの無償提供を受ける、つまりただでもらう。ただし、ストラップと広告チラシを一つの袋に入れたうえで、提供してもらう…。
業者からすれば、もちろんただでストラップを提供するだけなら何のメリットもありません。セットで広告を入れられる、その広告料の当てがあればこその「無償提供」です。どのくらいの広告料収入を手にしているかは、区は把握していないと言いますが、母子手帳と一緒に、妊婦さんたちをピンポイントでねらって、しかも区が配布してくれるのですから、広告効果は絶大なはずです。
区としては“経費節減”の宿題があったのでしょう。あるいは、広告を活用して財源を探せ!という、特に議会サイドからのプレッシャーもあったのでしょう。この仕組み自体は事業者からの提案だったようですが、区は飛びつきました。
浮いた経費は70万。それだけでも浮かせられるのなら、広告いいじゃない?という意見もありそうです。でも、そのことで区と企業活動との境目があいまいになり、母子保健行政が――しかも区と妊婦との最大の接点が、営利活動の舞台になりました。得たものと失ったものと…私なら、考えてしまいます。
そもそも、あのストラップが1個100円近くするというところもちょっと驚きです。簡単なビニール製のマークです。他の自治体でいくらくらいの値段で作っているか調べられていないのですが、別に練馬だけで使っているわけではないので大量生産でしょう。しかも、首都圏の鉄道会社などでは無償で配布しているようです。経費節減だけなら、もっといろいろと手はあったでしょうに。
「母子手帳」に、たくさんの広告がついてきた…という話、これで最後です。練馬区政の向いている方向を教えてくれる、小さいけれど象徴的な問題だと思います。

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