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「応益負担」と憲法

 障害者自立支援法が「応益負担」を定めたことなどが憲法に違反するとして、全国の障害者が起こしていた訴訟について、7日、原告と国(厚生労働省)が和解に向けた「基本合意書」を取り交わしました。基本合意書は、原告弁護団のホームページに掲載されています。

障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会

 合意書には、こんな一文があります。
「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる。」
 この合意文書には長妻厚生労働大臣が署名しているのですが、しかし、根本的な総括と言うべき一文ですね。応益負担が「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけた」…「応益負担」が当たり前のように正当化され、推し進められてきたこの間の経緯を思い起こせば、隔世の感があります。
 さて、区の担当者はこの合意をどう受け止めるのでしょうか。
「障害者自立支援法は、障害福祉サービスを持続可能な制度とするため、国の財政負担を補助金から負担金とする一方、利用者負担について原則として定率負担を導入したものであり、区としては基本的にこの制度の定着を図ってまいる考え方であります。従いまして、国へ制度の撤回を要望することは考えておりません。」
 これは、2006年の定例会一般質問での健康福祉事業本部長の答弁です。区は、様々な負担軽減策に言及しつつも、基本的には「応益負担」の導入を支持してきました。整理しなければなりませんね、この区の姿勢はどうだったのか。
 しかし、自立支援法の「応益負担」が間違っていたとして、では介護保険の「応益負担」はどうなのか。あるいは医療は? さらには、たとえば保育園の利用者負担のあり方は?…自立支援法に留まらず、社会保障全般における負担の問題を憲法、基本的人権という本質的な視点から検証し直す土俵をつくったという意味でも、今回の合意はとても意義あるものとなるかもしれません。

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