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石神井「再開発」は“適法”か② ~都計審部会の議論から (続)~

再開発準備組合から、景観計画・条例に基づく協議の申請を受けた区は、同じく景観条例の17条2に基づいて都市計画審議会の意見を聞くこととし、7月の審議会で正式に諮問がなされました。

(大規模建築物の建築等に係る事前協議)
第16条 大規模建築物の新築、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替または色彩の変更に係る届出を行おうとする者は、規則で定めるところにより、あらかじめ区長に協議しなければならない。
(事前協議の指導等)
第17条 区長は、前条の規定による協議があった場合において、良好な景観を形成するために必要があると認めるときは、当該協議をした者に対し、指導もしくは助言を行い、または報告を求めることができる。
2 区長は、前条の規定による協議があったときは、都市計画審議会の意見を聴くことができる。

こんな内容の諮問です。

諮問第429号 石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業に係る練馬区景観条例の事前協議について

本計画地のある石神井公園周辺地区が練馬区景観計画において景観まちづくり地区に位置付けられていること、高さが100mを超える建築物が計画されていること、東京都景観条例第20章の規定による事前協議に区の意見を付すことが必要となることから、都市計画審議会の意見を聴くこととした。
(第221回練馬区都市計画審議会 報告事項3 説明資料)

諮問に対する審議会の見解を取りまとめるために、高度地区評価・景観部会が8月27日と10月9日の2回、開催されました。今は、会議の結果を「意見」として文章に取りまとめる作業に入っているところです。「意見」は今月末に予定されている都市計画審議会に報告されると思われます。

さて、部会ではどんな議論が行われたのか。一部非公開とされた部分がありますが、それ以外のやり取りを聞いた限りでは、石神井公園駅南口西地区市街地再開発計画に対する部会の委員の評価は大変厳しいものでした。2回の部会の議論の最後に、小場瀬令二部会長(筑波大学名誉教授)が「個人的なまとめ」として発言をしましたが、それは、この再開発計画に対する部会の空気をよく表わしたものでした。傍聴者のメモから、発言内容を起こしてみます。

小場瀬部会長のまとめ
(景観部会として参考意見を述べるにあたっての部会長のまとめ)
1 街の特性に配慮した景観という点では、石神井公園からどう見えるか。石神井公園に向かってどう街ができていくかということになるが、この計画が石神井公園らしいとは言えない。周辺の建物とどう調和していくかを十分に検討すべき。
2 緑のネットワークができていいというが、特に管理をどうやっていくかという観点が必要。絵に描いた餅になりかねない。
3 オープンスペースについては、コーナーに広場があるのはいいけれど、ネットワーク化するのがただ線で結んであるだけで、実際には232号線が間にあって、その通りには人が動けそうにない。
4 駅周辺の空間を使うという点では関係する区民はたくさんいる。敷地内だけでなく、地域と一緒にやる、地域住民を巻き込む仕組みが必要。そのためには地域住民にとって資産となるものは何か。広場が使えないとか、貫通通路を8時になったら閉めるとか、そういうことになりかねない
5 一番問題なのは遠方からの展望で、これは非常に不十分。思い切ったデザイン上の変更を必要とする。高さを若干低くする、あるいはかなり思い切って容積を減らすことも必要

部会長は、「採算ではなくて地域の計画が必要。採算でしか100mの説明ができませんというのでは、非常に困る」とも明言しています。事業者や区が、採算上100mのボリュームが必要だと主張していることを念頭に置いたものです。副部会長の柳沢厚委員も、この部会長意見を補足する形でこう発言しています。
本来であれば50mのルールをすでに決めている。50mが基本。それを超えざるをえないということについてきちっと説明できなければならない。やむを得ないというだけではだめで、計画論的に合理的な説明が必要。

部会は、100mもの高さが必要で合理的だとは判断しなかった。地区計画の最大50mを大きく超えた建物を認めるべきという区や事業者の主張に納得しなかった。そういう結論、極めて重大で、そして深刻な結論です。

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