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「単線」と「複線」 ~相鉄本線と新宿線~

相鉄本線の鶴ヶ峰駅周辺で進められようとしている連続立体交差事業は、「地下」方式で行く。これが、事業主体である横浜市の選択です。一方、西武新宿線は「高架」方式。この二つの路線の二つの事業、比べてみると気になることがたくさん出てきます。

たとえば、シールドトンネルの構造の違いです。西武新宿線は、上り下り、それぞれの線が一つのトンネルに入る形です。「単線シールド」と言います。一方、相鉄線の方は一つのトンネルに上下両方の線路を入れる方式「複線シールド」を採用しています。図で比べてみると、こんな感じです。

まず、こちらが西武新宿線。図は、東京都がまとめた比較設計協議書から抜き出したものです。黒くなっているのは、文書が開示れる過程で墨塗りになった部分です。
単線シールドにした場合、どうしても鉄道区域の幅が広くなってしまいます。都の説明では、新宿線のシールドトンネルは二つ並べると端から端までの幅が約15mになるとのこと(両側0.5mの余裕が必要)。現在の鉄道敷地の幅がだいたい12mなので、それよりも3mはみ出してしまう。東京都は、都市計画素案の説明会で「地下」方式をとった場合でも用地の買収が必要となるという説明をしていました。具体的には、11,600㎡の土地を買い取る必要がある、影響の出る建物は179件になる。こんな数字を示していましたが、実はこの買収のかなりの部分が上に書いた3m部分にあたるのです。

一方、こちらが相鉄線。横話が開催した説明会で使われた図です。

複線シールドの場合、トンネルは一つです。単線に比べてトンネルの径は大きくなりますが、しかし一つで済みます。当然、必要とする事業区域の幅も小さくなります。相鉄線の場合、横浜市の説明では複線シールドにしたおかげでおおむね現在の鉄道敷地内に収まり、地上部の買収はほとんどないとのことです。

シールドが「単線」になるのか、「複線」になるのか。実は、このどちらにするかで事業の条件自体が大きく変わってくることになります。いちばんわかりやすいのが、上で見た地上の用地買収への影響です。ちなみに、西武新宿線の複々線化計画、いわゆる地下急行線計画は1993年に計画決定されたものですが、こちらは「複線シールド」を採用しています。そのため地上部への影響は高田馬場駅の一部を除いてないということです。もし西武新宿線が「単線シールド」ではなく「複線シールド」であったら、地上への影響はどうなったか? なぜ「単線」を採用したのか。ぜひ東京都には説明を求めたいところです。

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