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保育保障を社会転換のステップに ~「待機児童」はいったい何人? (終)~

長々と書き連ねてきましたが、「待機児童」問題のとりあえずの整理をしてみます。

「待機児童」は、児童福祉法の定める保育の保障という視点からはあってはならないものであり、その解消、つまり「待機児童ゼロ」を国・自治体挙げて約束しなければならない理由は確かにあるのです。しかし、それでも待機児童はいまだに解消されていません。しかも、その待機児童の数字は決して待機の実態を映し出したものではありませんでした。①認可以外の保育でしのいでいる、②育休延長でしのいでいる、③保育の条件や費用などでマッチングがうまくいかないなど、たくさんの子どもたちが「待機児童」から外されてきたのは、これまで見てきた通りです。
さらに言えば、ここでは、保育所等の入所申請という形で顕在化した保育ニーズしか検討されていません。そもそも保育を利用して働くことをあきらめたたくさんの人が、この顕在化したニーズの背後にはいるはずです。また、フルタイムではない場合でも保育を利用することは可能であり、短時間保育認定という形で制度としてもしっかりと位置付けられているにもかかわらず、そのこと自体が知られておらず、短時間保育認定に対応するニーズはほとんど拾われていません。

この間、自治体はそれぞれに保育基盤の整備に努めてきました。練馬区が公表している保育の「受入定員」は、2018年度で17,116人。10年前に比べるとほぼ倍増です。その努力を否定するものではありませんが、この定員のいまだに1割以上が認可外の事業です。そして、この数字では決定的に足りません。「待機児童」問題を地域ごとのミスマッチの問題であるかにいう練馬区の認識は、あまりに事態を矮小化していると言わざるを得ません。

次々と顕在化し広がる保育のニーズに対し、後追いで基盤整備を進めることはもはや限界です。保育を利用することがむしろ当たり前の社会。全ての男女が公的保育を利用して子育てをしながら、等しく社会的な労働を担っていくことが当たり前の社会。そういう社会への転換を思い切って進めること。労働政策の大きな飛躍、家族に多くを依存した介護や子育てのシステムの抜本的な見直し、そして税・財政基盤をどう確保するかという点での発想の劇的な転換が求められています。
もちろんそれは、もはや自治体の努力にとどまらず、国を挙げての社会のあり方の転換であるはずです。しかし、こうした転換を後押しし突き動かしていくために、自治体にはやれること、やるべきことがあるはずです。何より、待機児童の実態——問題の広がりと深刻さを徹底して顕在化すること。広く保育を必要とする子育て世代のニーズを可視化することです。「待機児童」の数をめぐるごまかしやその場限りの取り繕いをやめ、そうした努力に徹して初めて、子育てを大切にする、子育て世代の立場に立つ区政と言うことができるはずです。(終わり)

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