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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「公益を害する恐れ」 ~練馬区と「統一教会」(2)~

「ピースロード練馬」など、「統一教会」の関連団体の練馬区環境美化活動団体への登録は、今年3月をもって解除されました。しかし、練馬区との公的な関りはここで終わらず、今度は公設掲示板等へのポスター掲示が4月から始まります。
何があったのか? ~練馬区と「統一教会」~

掲示は8月まで続きました。そして、安倍元首相の銃撃事件以後、「統一教会」問題が大きく取り上げられる中で、掲示は中止され、区はいったん掲示したポスターの撤去依頼まで出す事態となりました。
まずはこの経過を振り返ってみます。

8月10日、ようやく区は動いた
8月10日に決済された、「ピースロード練馬」あての通知

区の地域振興課から各町会などに8月分のポスターが送付されたのは、7月25日です。この時点では、「ピースロード練馬」のポスターが含まれていることは問題になっていません。事態が大きく動いたのは8月10日です。この日、区は地域文化部長の決裁で『公設掲示板および協力掲示板のポスター掲示について』を決定しています。こんな内容の文書です。

 区では、練馬区掲示板等管理要綱により、 掲示板等の設置及び管理等に関し必要な事項を定め、掲示板に掲示できる掲示物についても規定している。
 今回、公設掲示板および協力掲示板に掲示しているポスターの内、現在報道等で取り上げられている団体と関係のある団体のポスターが含まれていたことが確認された。ついては、今後の当該団体の公設掲示板および協力掲示板の利用について、下記のとおり決定する。
1. 経緯
 当該団体のポスター掲示は、一般の清掃ボランティア活動の区民への周知として令和4年4月から承認してきた。 しかし、 最近のニュース等による報道を受け、 区民から、当該団体のポスターを掲示することについて、 広聴処理依頼を含む複数の意見が寄せられている。
 また、一部の町会からは掲示中止の連絡があり、既にポスターを撤去している地域も出ている。
2. 今後の対応
 当該団体が、過去に非常に社会問題化した団体と密接な関係であるとの報道等から、公設掲示板および協力掲示板に掲示されたポスターを目にする区民が不安に感じている現状がある。
 掲示板に「掲示できないもの」として、練馬区掲示板等管理要綱第4条第4項 「特定の個人または団体を支持し、 または誹謗中傷すると認められるもの」 および第4条第5項「その他の公益を害するおそれがあると認めるもの」にあたると判断し、9月以降の公設掲示板および協力掲示板への掲示を承認しないこととする。
3. ポスター作製団体
 ピースロード練馬 (以下、略)

この決裁書類には、17日付で『ピースロード練馬』に対して出される通知も含まれています(上の写真)。また、同日付で、『ポスター撤去について(依頼)』も決裁しています。こちらは、掲示板の管理を委託している町会等あてに発出する文書です。そこにはこう書かれています。

ポスターの撤去について (依頼)
 ポスターの掲示につきましては、日頃よりご理解とご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。
 先日、8月1日から8月15日まで掲示していただくポスターを各町会・自治会のポスター担当者様宛に郵送させていただきました。
 その中で、 現在報道等で取り上げられている 「世界平和統一家庭連合」と関係のある団体のポスターが含まれていました。
 区は、当該団体のポスターについて、 練馬区掲示板等管理要綱第4条第4項 「特定の個人または団体を支持し、 または誹謗中傷すると認められるもの」 および第5項 「その他の公益を害するおそれがあると認められるもの」 にあたると判断しました。
 今後、当該団体が主催する事業のポスターを掲示しないことを決定し、当該団体へ通知したところです。
 そこで、急なお願いではございますが、 撤去にご協力いただきたく、 ポスター担当者様へ別紙のとおり依頼させていただきます。

この文書は、正式には24日になって部長の決裁が下りています。決裁完了を待たずに発出されたということでしょうか。所管のあわただしい対応ぶりが目に浮かぶようです。
しかし、なぜ8月10日だったのか。

政府に追随しただけか?

おそらく政府の動きに突き動かされたものだろう。これが、私の推測です。まさにこの10日を前後して、岸田政権は「統一教会」問題に対する対応を大きく転換させました。簡単に追ってみると…

8.8 岸田首相、臨時の党役員会で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について「我が党所属の国会議員には、国民に疑念を持たれることのないよう、政治家としての責任で点検し、適正に見直してもらいたい」と指示。
8.9 自民党の茂木幹事長、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る通知を所属国会議員に出した。「国民に疑念を持たれることのないよう、政治家の責任で関係を点検し、適正に見直してください」と指示。
8.10 内閣改造
8.12 河野消費者担当相、記者会見で月内にも霊感商法についての検討会を設置するよう消費者庁に指示したことを明らかに。「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と政治との関係について、「一般論でいえば反社会的な団体とは関わりを持たないというのが大原則」などと話した。

安倍元首相の銃撃から1ヶ月余。「統一教会」問題はすでに大きな政治問題となっていましたし、「統一教会」とその関連団体の姿や動きが四方から伝えられてきた中で、政府が動いて初めて練馬区が対応を変えたとすれば、それはあまり名誉なことではありません。

しかし、それはともかく、上の通知を見ると、掲示板ポスターの所管である地域文化部は、「ピースロード」などの団体をたんに「宗教の協議を推進」したからではなく、「特定の個人または団体を支持し、 または誹謗中傷すると認められるもの」そして 「その他の公益を害するおそれがあると認められるもの」 にあたると認定し、そのことをもって掲示を拒む判断をしています。掲示板等管理要綱には、掲示できないものを規定した第4条の第3項として「宗教活動と認められるもの」が挙げられているのですが、この条項ではなく、第4項、第5項を引いています。これは、とても重要なことです。なぜなら、「公益を害する」団体との結びつき、あるいは便宜の提供等は、宗教団体一般に対するそれに比べて格段に重い責任を問われるものだからです。

区議会は何をしていたのか

しかし、区のこの重大な認定、判断があったにもかかわらず、そしていったん送付したポスターの撤去を依頼するという大混乱に陥っていたにもかかわらず、その後、この問題を解明・検証し、あるいは追及しようとする動きは区全体としても、また区議会としても、全く広がらなかったようです。

折りしも、決算議会の直前でした。9月の決算議会は長時間にわたる決算審査があり、2月の予算議会と並んで、各会派・議員の調査能力と政治的な立ち位置を鋭く、また明瞭に突き出すことのできる場です。まして、マスコミや国会での議論はどんどん広がりと深まりを見せ、国民の関心はいよいよ高く、厳しくなっていた時期です。
練馬区は、「統一教会」とどう関わってきたのか。大いに議論されるべきであったのに、区議会の場ですら話題にもならなかったとしたら、それはなぜなのか? 不思議でなりません。

続く

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