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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

「統一教会」問題を考える

岸田総理の「謝罪」

「統一教会」※と政治との関わりが、大きな関心を集めています。8月31日の記者会見で、岸田首相は、自民党議員と「統一教会」との間に「密接な関係」があったのではないかという疑念を受けていることについて「率直にお詫び」すると述べました。「統一教会」が「社会的に問題が指摘される団体」であることを認め、「付き合いには厳格な慎重さが求められる」と述べたうえでの謝罪です。

※正式名称は「世界基督教統一神霊協会」と言うそうです。2015年に、これも曰く因縁が指摘されている経過の中で名称を変え、今は「世界平和統一家庭連合(家庭連合)」と名乗っています。ここでは、「統一教会」と呼ぶことにします。

今、率直に申し上げて、政治に対する国民の皆様の信頼が揺らいでいると深刻に受け止めております。改めて、総裁選出馬を決意した昨年の原点に立ち戻り、私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなければならない。信頼と共感の政治に向け、決意を新たにしております。
 まず、旧統一教会の問題です。我々政治家は、それぞれの政治活動において、可能な限り多くの方々と接し、その意見に耳を傾け、自分自身の考えも御理解いただく努力が不可欠です。また、信教の自由や政教分離は憲法上の重要な原則として最大限尊重されなければなりません。
 しかしながら、政治活動には責任が伴います。宗教団体であっても、社会の構成員として関係法令を遵守しなければならないのは当然である一方、政治家側には、社会的に問題が指摘される団体との付き合いには厳格な慎重さが求められます。
 私の政権における大臣、副大臣、政務官については、自ら当該団体との関係の点検を行うとともに、関係を絶つことの確約を得たところです。しかし、閣僚等を含め、自民党議員について、報道を通じ、当該団体と密接な関係を持っていたのではないか、国民の皆様から引き続き懸念や疑念の声を頂いております。
 自民党総裁として率直におわびを申し上げます。

首相が特定の宗教団体との関係について、公に謝罪をする。異例なことです。それだけ「統一教会」の反社会的なふるまいは広く、深く問題にされてきたということですが、それにもかかわらず「統一教会」と行政、あるいは議員はなぜこれほどまでに深くつながってしまっていたのか。そのどこに、問題があるのか。改めて考えてみました。

国政から地方政治まで。練馬でも?

「統一教会」が国政から地方政治まで、広範に、また多様なかたちで政治と接点を持ち、ときに深く関与していたことが明らかとなってきています。その異様さには驚くばかりです。行政であれ議員であれ、関連団体やその企画への後援、公認、補助、参加などを得、それをあたかも政治の”お墨付き”のようにして自身の宗教活動や政治的な目的実現のために利用していくパターンが目立ちます。”お墨付き”へのある種の見返りとして、「統一教会」からさまざまなかたちで選挙における支援を受けていた議員も少なくないようです。行政の場合は、首長の選挙での”見返り”だけでなく、議員との関係も含めていろいろな配慮や思惑が介在したのかもしれません。

ただ、「統一教会」と行政、議員との関わりについては本当にその一端が明るみに出たに過ぎないと思われます。国会議員についても、特に焦点となっている自民党の「点検」がとてもあいまいで不十分なものであることが次々と指摘されていますが、自治体や自治体議会の議員についてはほとんど実態が明らかになっていません。

実は、練馬区でも「統一教会」との関りが問われる事態が起きていました。「統一教会」の関連団体の一つとしてよく名前が出てくる「ピースロード」が、練馬区の環境美化活動団体としての登録を認められていたのです。

「ピースロード」は、みずからのことをこう説明しています(ピースロード2022のサイトより)

この夏、自転車縦走による「ピースロード2021 in Japan」が全国で活発に行われましたが、世界平和を推進するためにUPF総裁の文鮮明・韓鶴子夫妻が強調しているのが「(他者の)ために生きる」ことの大切さです。ピースロード練馬では、これを「ピースロード精神」として受け継ぎ、年に一度の自転車走行に終わらせず、地域に根差した活動として定着させるべく、8月から毎月、30~40人が参加する環境保全活動を実施してきました。

UPFというのは「天宙平和連合」の略称で、この団体は「統一教会」の教祖である二人が総裁となって発足した国際NGOです。「ピースロード」の環境活動が「統一教会」と一体のものとしてあることは疑いようのないように思えますが、練馬区は環境美化活動団体への登録を認めました。

「環境美化団体」を入口に

環境美化活動団体というのは、区が清掃用具等の支給の前提として登録を求めているものです。今年3月現在の登録団体数は、区のサイトによれば町会・自治会が56団体、ボランティア団体が52団体。本来なら、地域地域の地道な活動を担う団体と区との、ささやかで地味なつながりと言えそうです。しかし、ここに、「ピースロード」はおそらくはとても意識的に入り込んでいました。

「ピースロード」練馬の登録が認められたのは2021年度からのようですが、今年度は登録が認められていないとのことです。なぜ登録が更新されなかったのか、その経過について、山岸一生衆議院議員が区のヒアリングの結果として、こう書いています。

旧統一教会の関連団体が、昨年度、練馬区の「清掃ボランティア団体」として登録し、練馬区から清掃用具の支援を受けていたことが、山岸一生の練馬区への聴き取りで分かりました。
この団体は「練馬区の登録団体であること」をタテに、練馬区の区立施設に一方的にチラシを置くなどしたため、練馬区が疑問視し、今年度は登録されなかったそうです。
       →山岸議員の公式サイト こちら の記事より

「ピースロード練馬」は、他の「統一教会」関連団体と共催で昨年11月にコンサートを開いています。会場は、練馬文化センター。そのときのチラシには「ピースロード練馬は練馬区長から承認を受けた環境美化活動団体です」とわざわざ記載されています。「ピースロード」の活動の中で地域の清掃はその一部でしかないはずなのですが、まるで環境美化活動団体”でしか”ないように、そして団体自体が練馬区長から「承認」を受けたかのように。

ピースロードコンサート2021チラシ 同団体の公式サイト こちら より

区が問題にしたというチラシは、これかも知れません。練馬区は、清掃用具提供のために設けたささやかな名義を見事に利用されたということでしょうか。
しかし、このこと一つとっても、解明されていないことが数多くあります。区は、どういう経過で環境美化活動団体への登録を認めたのか。練馬固有の地域団体でないことは明らかであり、ちょっとした注意と警戒心があれば「統一教会」との関連は容易に推測できたはずであるのに、なぜ登録を認めたのか。「ピースロード」の活動に区議会議員が参加していた記録が確認されているが、登録の過程で議員の関与はなかったのか、等々。

問われる区の関与、責任

また、今年度、環境美化活動団体の登録を更新させなかったのに、「ピースロード」のチラシが区内全域で練馬区掲示板に掲示されていました。これも、なんとも不思議な話です。
貼り出されていたのは、このチラシです。

掲示されていたのは、つい先月のことです。区の登録団体でもないのに、いやいや問題があるということで登録を認められなかったはずなのに、なぜそんな団体のチラシが公の掲示板に張り出されるようなことになったのか。これもまた、大きな謎です。公営掲示板ですから、どんなチラシを掲示するかは区が判断します。どんな団体でもオーケー、誰でも勝手に貼れるなどということは、全くありません。誰がチラシを持ち込んだのか。区は、どう判断して掲示を認めたのか。
こうした謎は、まず区みずから、あるいは区議会みずから解明すべきことであるはずですが、今のところは、そうした動きは区民には見えていません。

「統一教会」と政治との関わりは、少なくとも地方レベルではほとんど可視化されていない。このことはとても大きな問題であると言わざるを得ません。流されるままに私自身も”終わったこと”のように感じてしまっていたところがあり、議会に身を置いてきた者の一人として責任も感じます。根が残れば、いつ芽が出、実を結ぶかわかりません。自治体レベルでのつながりは、まさにその「根」だからです。

「統一教会」の「社会的に問題のある活動」によって様々な被害にあい、辛い経験のただなかにある人が今なお少なくないと言われる中で、この「根」を正すことは政治の大きな責任のはずです。

「宗教法人」と政治

しかし、「統一教会」問題は、ただ“反社会的な”活動を行っていた特異な宗教団体と政治の関わりにとどまらない、もう一つの根深い問題をはらんでいます。それは宗教法人制度の在り方、宗教法人と政治との関わりという問題です。

日本国憲法は、国民の「信教の自由」を保障しています。誰であっても、それぞれの信条に基づいて特定の宗教を信仰する自由、もしくはしない自由があります。また、宗教的な指導者の下に団体をつくり、組織として宗教活動を行うことも「信教の自由」が想定していることです。

しかし、宗教団体一般と「宗教法人」は同じではありません。宗教法人格を持たず、任意の団体として活動する宗教団体もたくさんあるでしょう。「宗教法人」は、宗教団体が社会経済活動の中で団体としての人格を認められるための法律的な仕組みです。そして、法律(宗教法人法)は、法人としての宗教団体の設立を認めるだけでなく、この法人が行う宗教活動を公益的な性格を持つものとして位置づけ、税制を中心とした様々な社会的な便宜、支援の仕組みを置いているのです。

もっともわかりやすいのは、税の減免です。宗教法人は税法上の「公益法人」の一つとされ、法人が行う宗教活動については、消費税も所得税も非課税です。宗教活動のための資産であれば、土地や建物等に対する固定資産税も非課税です。
本来の宗教活動は当然ながら営利を目的としているとは言えませんし、信者の喜捨を頼りに地道に、まじめに宗教活動を担っている法人も、無数にあるでしょう。憲法上の権利を支える基盤という点でも「公益性」を認めること自体は理解できます。問題は、「公益性」があるからと税制面でも大きな優遇を受けているその宗教法人が、特定の政党や議員を後押しすることが許されるのかということです。

宗教法人は、その宗教的な権威や法人の組織的な力を、特定の政党や政治家のために用いてはならないのではないか。

「統一教会」と政治の関わりが明るみに出したもう一つの問題は、ここにあります。

生協やNPOは厳しく制限されているのに…

税法上「公益性」が認められている法人は、法人税法の別表2に列記されています。そこには100を超える種類の法人が並んでいますが、その中に「宗教法人」も入っています。しかし、ここに出てくる公益法人の多くは、政治活動について様々な制限を課せられています。もっともわかりやすいのは、生活協同組合とNPO法人(特定非営利活動法人)です。この二つの法人を制度化した法律には、こう書かれています。

消費生活協同組合法
第2条2 消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会は、これを特定の政党のために利用してはならない。

特定非営利活動促進法
第三条 特定非営利活動法人は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならない。
2 特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用してはならない。

公益法人であっても、様々な政策的な課題について意見を言い、要望を出し、その実現のために活動すること自体は否定されていません。しかし、この二つの法人のように、特定の政党や候補を法人として応援することは法律などによって厳しく規制されています。これらの条文が、生協やNPOの活動の中でとても重い意味を持っていることは、関係者はよくわかっています。

ところが、同じ「公益法人」なのに宗教法人に対しては、少なくとも法律上はこうした制限、規制が全くないのです。

「統一教会」に限らず、様々な宗教法人が選挙において特定の政党や候補者を応援している風景を、私たちはたびたび耳にし目にしてきました。果たしてそれは、許されることなのか。他の公益法人と比較して、公平性・公正性に欠けるところはないのか?
繰り返しますが、任意の宗教団体であれば、特定の政党や候補者を応援したとしても少なくとも法的には何の問題もありません(宗教的な理念、教義の評価としてはあるかもしれませんが)。しかし、宗教法人として認可を受け、「公益性」を根拠に大きな税制上の優遇を受けておきながら、特定の政党や政治家のためにその組織の力を使うのは許されないのではないか。

“教祖”たちが、その宗教的権威を梃子に信者に特定の政治家への支援を求めていたとしたら、どうか。信者たちが、教会の意を受けて特定の政治家の選挙を支えていたとしたら、どうか。そして、寄附や“霊感商法“を介して手にした莫大な資金が、税法上の優遇を受ける一方で日本や世界の特定の政治家や政治勢力のために注ぎこまれていたとしたら、どうか。
それはやはりおかしなことであると、私は思います。そしてそれは、決して「統一教会」だけの問題ではないはずです。

宗教法人の在り方、とりわけ宗教法人と政治との関わりについては、改めて検証されるべきです。そのためにも、宗教法人の経理や事業の全体がほとんど見えないという状況にメスを入れていくことも必要になるでしょう。

闇は深いです。しかし、「統一教会」問題がもたらした衝撃は、この闇に迫ることを政治に求めています。

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