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着実に進む”区移管” ~児童相談所は「区立」で!(6)~

前川区長が、児童相談所についてまた区報に書いています。

区立は「理解しがたい」…

 都に入って最初の6年半、児童福祉行政に従事しました。…児童相談所の運営にも現場で従事しました。その私の実感ですが、特別区は、人口は多くても、社会実態から、広域専門行政は担えないのです。ハードの行政で、水道・下水道・公共交通が担えないのと同じです。
 区立児相の設置を区の自治権拡充の手段とする方達がいます。何故、区立が都立よりベターなのか、説明が無いままです。児童福祉に生きてきた私には、理解し難い事です。
 今回、都立練馬児童相談所の設置が決定されました。区の身近なケアと都の広域専門的なケアとの連携こそ必要であるという方針に、都が明確に舵を切ったものです。引き続き練馬の子どもの為に全力を尽くそうと決意しています。
(練馬区報2022.3.1 『5階の窓から』)

「区立児相の設置を区の自治権拡充の手段とする方達」が誰を指しているのか、わかりません。もしかしたら私も入っているのかもしれませんが、だとしたら、区報に反論を書かせてほしいなあ…。

それはともかく、ここで前川区長が言っていることは、事実に反します。都立練馬児童相談所の設置で、都は「区の身近なケアと都の広域専門的なケアとの連携こそ必要」という立場へ「明確に舵を切った」——区長はこう書いています。区長がこういう時、もちろん児童相談所は「都の広域専門的なケア」に含まれています。要するに、区立の児童相談所を求めることなど「理解しがたい」という前川区長の立場を、都が支持したと言いたいのでしょう。

本当でしょうか。

広がる「区立」の児童相談所

児童相談所の区移管に関する漢人あきこ都議会議員の文書質問に対して、都はこう答えています。

ここでは児童相談所業務を区が担うようになることを「区移管」と呼ぶことにします。法律上は、児童相談所は都と区、どちらの業務でもあり、法的な意味で事務の「移管」がされたわけではありません。

問)基礎自治体でもある区が児童相談所を自ら設置することについて、都としての基本的な評価、認識を伺います。
答)平成28年の児童福祉法の改正により、特別区は個別に政令指定を受けて児童相談所を設置できることとなっており、都は、区から申出があった場合、子供の安全・安心を確保する観点から適切に対応しています。
       →漢人議員の文書質問・答弁全文は こちら から

さらっとした答弁ではありますが、都が児童相談所の区移管、区立の児童相談所設置の動きに対して否定的だったり反対してはいないことはよくわかります。「子どもの安全・安心を確保する観点から適切に対応」している、と。そして、都は職員の研修・養成や施設入所に関する調整などの仕組み作りに協力し、一定の財政措置も講じ、その結果、区立の児童相談所は毎年、確実に増えており、そしてこれからも増えていきます。

上の表は、児童相談所の開設に向けた計画を公にしている区について、そのスケジュールを取りまとめたものです。練馬区以外の22区については、この表で「未定」となっている区についても、都の調査に対して区立の児童相談所を設置する意向を表明しています。

このスケジュールに照らせば、2026年度の区立児童相談所の開設状況はこうなっているはずです。

2026年度、つまり4年後には、23区の中で区立の児童相談所を置いている区が多数派になります。練馬について言えば、周辺の中野、杉並、豊島、板橋の各区はこぞって区立の児童相談所を持つことになります。さながら”練馬包囲網”でしょうか…。
人材の確保や財政措置などまだまだ課題は多くありますが、区立の児童相談所の設置が大きな、既定の流れとなっていることはもう誰にも否定できないことです。「広域専門行政」である児童相談所は23区には「担えない」という前川区長の主張が、都庁での狭い経験を絶対化した頑迷な偏見であることは、事実をもって示されつつあります。(この点は改めて触れます。)

都区「連携」はよいことだけれど…

もちろん、児童相談体制に関する都区の連携もここに来て大きく展開しています。この点では、先鞭をつけた前川区長の功績は否定しません。しかし、それは児童相談所の区への移管、区立の児童相談所の設置を否定するものでも押しとどめるものでもありません。
区立児童相談所が増えていくといっても、時間も手間もかかります。2026年度でも、少なくとも11の区には区立の児童相談所はありません。また、法律上の制約もあって、三多摩では市がみずから児童相談所を設置する動きは今のところありません。これら東京都の児童相談所が引き続き管轄する地域では、児童相談所の在り方を見直していく中で区市との連携を深めていくことは当然に出てこなければならない課題であったのです。

こうした都・区や都・市の連携の試みの一方で、東京都は児童相談所の区移管に期待をし、あるいは区移管の進展を前提に中長期的な都としての児童相談所の在り方を検討してきています。そのことは、管轄人口の「適正化」の動き一つ見ても明らかです。一時保護所の定員拡大にしても、区立の児童相談所の設置がどれほど貢献しているかは、前回の記事で見てきたところです。区移管が円滑に進むことは、都にとっても大きな利益、活路なのです。

都区の連携「こそが必要」という方針に都が「舵を切った」などという前川区長の主張は、よほどの手前味噌でなければ、事態を——何より円滑に区移管を進めるために必死の努力をしている都や各区の担当者の姿を見ようとしないドグマだと言わざるを得ません。『5階の窓』はすっかり曇ってしまっています…。

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