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ハリー・ポッターに飛びついた!? ~点検・前川『アクションプラン』⑤~

点検・前川『アクションプラン』シリーズの5回目。今回のテーマは「ハリー・ポッター」と前川区政です。まずは、この文章を読んでみてください。

さながらワーナーの広告塔

この春、待ちに待った「ハリー・ポッター」のスタジオツアー施設が、としまえんの跡地に開園した。小学生の頃、母に連れられて映画館で観た魔法の世界を体感できるなんて夢のようだ。原作ファンの母を誘って出掛けよう。
駅から始まる映画の世界
池袋駅から豊島園駅行きの電車に乗った。電車の中からすでに映画の世界が始まっていたが、降り立ったプラットホームにも映画の世界が広がっていた。まるで映画のワンシーンの舞台に立ったような感じだ。
みどりの中を抜けると、目の前にはスタジオツアー施設が見えてきた。ロンドンに次いで世界で二番目の施設というから驚きだ。
映画のワンシーンを体現
完全予約制のスタジオツアーでは、撮影で実際に使用された本物の衣装や小道具が展示され、映画のシーンを体験することができる。ハリーたちの母校である「ホグワーツ魔法魔術学校」の大広間や寮の談話室など、映画で実際に使われたセットを巡り、魔法の特殊効果の仕組みを知ることができた。劇中で使用された制服やドレスなどの衣装、小道具や魔法のアイテムといった展示物を観ていると、気分はホグワーツに入学した新入生になったようだ。
歩き疲れたら、カフェテリアで一休み。映画にも登場した「バタービール」に舌鼓を打ちながら「あのセットの仕掛けには驚いた!」と興奮した様子の母。
映画の世界の舞台裏や撮影の秘密を体験し、初めて映画館で鑑賞したときの感動が思い出された。家に帰ったら、もう一度映画を見返してみよう。今後順次公開予定のシリーズ最新作も楽しみだ。

2023年にとしまえん跡地に開業予定という、ハリー・ポッターのスタジオ施設。そこに区民をいざない、カフェをアピールし、最後はちゃっかり、これから公開されるらしい映画のご案内。まさにハリー・ポッターの宣伝広告かと見まがう文章ですが、実はこれ、練馬区が12月に策定した『映像∞文化のまち構想』の一節です。

映像・文化の「スペシャル・エディション」

『アクション・プラン』は施策の柱5の戦略計画15として、「練馬ならではの都市文化を楽しめるまち」を掲げています。その中の取組の一つとして「ねりまの歴史を活かした映像文化のまちづくり」があり、『映像∞文化のまち構想』はその事業の一つでした。

もともと『構想』は2019年度(令和元年度)中に策定することになっていました。「素案」が公表されたのは、2020年2月です。ところが、その後、『構想』の話はぱったりと表では聞こえなくなってしまいました。2021年12月まで、丸2年近くも棚上げになっていたのです。
なぜ棚上げになっていたのか。「コロナ」があったからなどと区の担当者は答弁をしています。しかし、お金がかかる事業でもなし、苦しい説明です。本当のところは、ハリー・ポッターのスタジオ計画を取り込まんがために、策定作業を止めたのです。
スタジオ計画が明るみに出たのがちょうど2020年の2月、そして6月にはスタジオ施設を容認する都・区・事業者の『覚書』が締結されます。そして、こうした動きを受けて、『構想』は大きく書き直されます。『構想』の素案は映画に摸して3つのシーン建てからなっていましたが、ここにSpecial Edition として「メイキング・オブ ハリー・ポッター」が書き加えられました。冒頭の文章は、このSpecial Edition 中の一節です。

前川区長は、ハリー・ポッターに飛びついたのです。

『映像∞文化のまち構想』より

しかし、としまえんの閉園から都立の練馬城址公園整備に至る大きな流れを捻じ曲げたものこそ『覚書』であり、スタジオ施設でした。ここでは詳しく振り返ることはしませんが、縦横がそれぞれ200m近く、建築面積が3Ha(立体駐車場を入れれば4Ha!)という巨大な施設が、防災機能をどれほど制約するか。そして、プールであれカルーセル・エルドラドであれ、としまえんの思い出につながるものを残すためにどれほど大きな支障になってきたかは明らかです。スタジオ施設を建てるよりも、防災拠点のために、としまえんの思い出と魅力をつなぎながらしっかりしたよい都立公園を造ってほしいというのは、本当に多くの区民の願いでしたし、今でも願いであり続けています。
なのに、前川区長は、そうした区民の思いをまるであざ笑うかのようにハリー・ポッターに飛びつき、スタジオ施設事業の前さばきを買って出ようとしている。私には、そうとしか思えません。

「ねりまの歴史を活かした」スタジオ施設??

しかし、それにしてもハリー・ポッターのどこが「練馬の歴史を活かした」映像文化なのでしょう。スタジオ施設のどこに、「練馬ならではの都市文化」があるのでしょうか。
ハリー・ポッターが好きな人はもちろん、たくさんいるでしょう。かく言う私も、ハリー・ポッターの本も映画も、大いに楽しんだものの一人です。しかし、それは決して「練馬ならでは」「練馬の歴史を活かした」文化ではありません。それこそ牽強付会、というものです。そもそも、スタジオ施設の営業が認められているのは30年。30年後にはいずれなくなるはずの施設を無理やり練馬区政の中に位置づけ、高く持ち上げようとする前川区政の姿は、本当に異様です。

ハリー・ポッターのスタジオ施設に飛びついた『アクションプラン』を見ていると、改めてこんな疑問が浮かんできます。練馬城址公園の整備計画にスタジオ施設を割り込ませたのは、実は、前川区長だったのではないか? と。行政上は特段の権限を有しなかったにもかかわらず『覚書』に区長がわざわざ名を連ねたのも、そうした経緯があったからではないか…。
もともと旧としまえん全域を公園整備することを前提に都が進めてきた整備計画の検討作業が、なぜ突然ひっくり返ったのか。ずっと疑問でしたし、この疑問はいまだ解明されていません。それは、知事の力か、政治家の力か、はたまた区長の力だったのか。新しい区長には、ぜひこの辺りも徹底して究明・検証してもらたいたいものです。

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