前川区政の新しい『アクションプラン』の中で特に問題だと感じた項目について、少し詳しく見ていきます。
前川区政の際立った特徴は、都市計画道路や駅前再開発など、”都市化”に向けて強い意志を露わにしているということです。その点は、コロナ禍で社会環境も財政事情も大きく変化しつつある中でなお、まったく変わりません。いや、かえって前がかりとなり加速化していると言ってよいほどです。
『アクションプラン』の年度別計画(素案)には、地域で大きな懸案となっている事業も含め、必ずやり抜くという意志表示のような計画が並んでいます。
石神井公園駅周辺地区のまちづくり
▶南口西地区市街地再開発事業 2022年度組合設立認可
▶ 石神井庁舎の移転 「区⺠⽣活に密着した⾏政サービス」(区⺠事務所、⼾籍、国保、総合福祉事務所、地域包括⽀援センター、子ども家庭支援センター)を再開発ビルに移転
▶ 補助232号線 今年度事業認可、2022年度から用地買収
石神井公園駅南口の「まちづくり」は、強引な地区計画変更と超高層ビルを林立させる再開発計画に対する地域の強い反発を押し切って進められようとしています。地権者や住民が起こした訴訟は、時期尚早ということでいったんは却下されましたが、原告らは改めて提訴の意向とのことです。準備組合は区の全面的な支援を受けながら今年度末の組合設立認可申請を予定していると言われます。組合設立の認可は都の権限ですが、認可にあたっては練馬区の意見を聴かなければなりません(都市再開発法7条の9)。組合設立認可の是非を区長としてどう考えるか。区長選最大の争点の一つです。
補助135号線、232号線(大泉第二中学校関係)
▶ 2022年度「取り組み方針」策定。測量開始
東大泉6丁目にある大泉第二中学校を東西南北に分断する2本の都市計画道路、232号線と135号線は、もう20年近くにわたって混迷と混乱が続いてきました。学校の存続・改築と道路計画を両立することは至難の業であり、区の方針も二転三転、前川区長の強いイニシアティブでテコ入れし本来なら2019年度中に策定されるはずであった「取り組み方針」も、3年近くも宙に浮いたままになっていました。
地域では、教育環境を損なう道路事業への反発は強く、また、学芸大通りなどの現道の修復・改良を優先すべきという根強い意見もあるにもかかわらず、『アクションプラン』改定素案は改めて道路整備を進める意思を明確にしました。
外環道および外環の2沿道地区のまちづくりと外環の2の整備促進
▶ 外環の2沿道(新青梅街道~前原交差点間) 2022年度、重点地区まちづくり計画の検討区域の指定、まちづくり協議会の設立
▶ 青梅街道インターチェンジ周辺地区 2022年度、重点地区まちづくり計画の検討区域の指定、まちづくり協議会の設立
外環道は国の事業。外環の上を走る地上部の一般道・外環の2のうち前原交差点から新青梅街道の区間は都の事業です。しかし、どちらも練馬区は一貫して事業の推進を強く主張してきました。外環の2については、杉並区以南は事実上、凍結。青梅街道インターも杉並側は設置せず。練馬区の執着は異様です。外環の2は石神井公園のすぐ横、歴史ある住宅街を切り裂いていきます。外環・青梅街道インター予定地では町会ぐるみで訴訟を含む反対運動が続いています。”性懲りもなく”と言いたくなる区の姿勢です。外環本線の陥没事故について、安全対策を求めることすらしようとしていないのも深刻です。
西武新宿線沿線まちづくり
▶ 上石神井駅前のまちづくり 2023年度、権利者組織の設立
▶ 外環の2沿道まちづくり 2022年度、地区計画決定
▶ 武蔵関駅周辺地区のまちづくり 2023年度、地区計画決定
▶ 補助230号線(青梅街道~新青梅街道) 2023年度、事業認可
西武新宿線の連続立体交差事業が高架方式で都市計画決定されたことを受け、関連する道路事業や「まちづくり」が一気に動き出します。将来のまちづくりの可能性を大きく広げる地下方式が採用されなかったため、広場も含め道路事業が前面に出る流れです。上石神井駅の外環の2、武蔵関駅の230号線、さらには135号線、いずれも地域の合意形成は不十分なまま認可、事業化へ走り出そうとしています。
前川区長がまとめた最初の『ビジョン』のサブタイトルは「新しい成熟都市をめざして」でした。「成熟都市」とは何か? その後の8年間を見てきて、「都市基盤」の整備、それも大きな新しい道路とスクラップ・アンド・ビルドの「まちづくり」が際立って進みつつあると痛感します。
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