Access
池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

21歳の死

 21という若さで、自分の兄弟あるいは息子を失ったらどうだろう…そう思うと、鋭い痛みと怒りのようなものがどうしても突き上げてきます。

 5日土曜日の夜のことです。品川清掃工場の灰溶融施設で、灰を運ぶベルトコンベヤに労働者が挟まれ、死亡しました。工場を管理する23区清掃一部事務組合が各区の清掃主管部長に流した資料によれば、亡くなったのは21歳の男性Aさんで、「日立造船㈱従業員」とされています。この資料に記載されている経過をそのまま転記します。

9月5日(土)
20時52分 灰溶融施設内に設置されている密閉型灰搬送コンベヤに不具合が生じ、停止したので被災者が単独での復旧作業に取り掛かる
21時00分頃 同人より灰溶融中央制御室(日立造船㈱が管理)に、復旧には時間が掛かる旨連絡有
21時40分頃 点検巡回中の日立造船㈱の従業員が、普段開いていない点検口が開き、大塊物検知の警報表示が点灯しているのに気づき、周囲を確認したところ、コンベヤに挟まれている同人を発見
21時50分頃 119番通報し、救急・レスキューを要請

22時50分 死亡確認

 これを見るだけでも、いくつも疑問が湧いてきます。なぜAさんは一人で復旧に当たったのか。
 コンベヤに挟まれているのが発見されるまでの50分近く、Aさんから何の連絡もないことを制御室の人間はなぜ気にもしなかったのか。困難な復旧であるとすれば、なぜ応援に駆け付けなかったのか。
 コンベヤに挟まれたとすれば、どこかの時点でコンベヤが動いたことになるが、誰が、いつ、なぜ動かしたのか。そして、コンベヤが動き出したことを制御室は確認しなかったのか。確認したとしたら、Aさんが戻っていないこと、連絡もないことをなぜ不審に思わなかったのか。
 それだけではありません。Aさんは、本当に日立造船の従業員だったのでしょうか。社員研修、社員教育はどうなっていたのでしょう。一組の資料は「安全作業マニュアル」が順守されなかったことを示唆していますが、マニュアルは、なぜ徹底されなかったのか。

 一人の大切な命、若い命がむざむざ失われた、いや奪われたのです。限られた情報から察する限り、労災事故としては、あまりに初歩的な、それだけにあまりに悔いの残る事故であったに違いありません。そのことの痛切な自覚と真剣な反省が、すべての当事者に求められています。日立造船などの受託事業者だけではありません。施設管理者であり、委託しているとはいえ管理業務も含めたすべての業務の最終責任者である一組も、同様です。
 しかし、今日に至るまで、一組のホームページには、この事故のことが一言も触れられていません。なぜなのか??? こんな重大事故を引き起こしておいて、なぜ一言の謝罪も、いや報告すらなしに済ませられるのか。なぜ原因の徹底解明もしないうちに、工場を再開することができるのか。

 一組は、変です。

コメント