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「今」を、しっかり見極めたい ~「新型コロナ」と医療~

緊急事態宣言が1か月、延長されました。他方、都内の新規陽性者数はここ何日か減少傾向が続いています。ただ、減ったと言っても、今日4日の数字は734人。100人を超えて深刻な驚きを覚えたころのことを思い出すと、まだまだとても“落ち着いた”とは言えません。

それにしても、私たちは「数字」の持つ意味をしっかり知らされないまま、あるいは考えないままに振り回されているところがあります。新規陽性者についていえば、そもそも検査がどの範囲で、どのくらいの数、行われているかで大きく違ってきます。都は年末、積極的疫学調査の範囲をぐっと絞る方針を出し、各保健所もそれに従っているはずです。陽性者数を指標にするなら、検査がどうなっているかもきちんと分析・検証しなければ。

例えば、こんな統計があります。都内のPCR検査数の推移をまとめたものです。
(出典) 東洋経済オンラインの専用サイト → こちら

傾向的にPCR検査数が減っていることがわかります。これがなぜなのか。積極的疫学調査を絞れば、当然ながら行政検査の範囲も狭まってきます。そうした事情が関連していないか、とても気になります。陽性者が減ったのではなく、見つかる陽性者が減っただけ、などということはないのか?

もうひとつ、医療提供体制を評価する指標の一つとして、「重症者数」が繰り返し報道されています。都内重症者数は3日=125人が今日4日=115人。10人減った…と。ここまでは報道するのですが、実は死亡者数累計を見ると3日=949人→4日=974人、つまり25人も増えています。都内の日々の新規死亡者数は確実に増え続けています。こちらも、東洋経済オンラインのサイトからです。

重症者が減るのは、①症状が緩和して中軽症になる場合だけでなく、②死亡して「退院」する場合も含まれます。実は、今、重症者が減っている要因の大きな部分は①ではなく②、つまり死亡退院が増えているからかもしれません。しかも、さらに気になるのは、死亡者の数の方が重症者の減り方よりもずっと大きいことです。これが何を意味するのか?
統計上の「重症者」の定義は、ICU(集中治療室)に入っているか人工呼吸器またはECMO(体外式の人工肺)を装着しているか、です。つまり、症状が重いというだけでは「重症者」にはカウントされません。今、ICUや高度な呼吸器治療は本当にひっ迫していると言います。本当は重症なのに、ICUにも入れず、呼吸器も使えないで、したがって数字上は重症者に数えられないままに亡くなる人が増えているのではないか…。もしそうだとすると、本当に深刻です。重症者が減って見える陰で、実際には新型コロナ重症者医療の“崩壊”が広がっていることになるからです。
亡くなった方が、どこで亡くなったのか。どんな状況で亡くなったのか。そこには、「今」の医療の危機を知る大切な情報があるはずです。生のデータからほど遠いところにいる自分が歯がゆいですが、しかし、ほとんどの市民はさらに限られた情報に振り回されています。マスコミにも、こういうことをあの無内容なコメントを続ける小池知事にでもしっかりぶつけてほしい。それは、「今ある危機」をしっかり理解するために不可欠だと思うのですが。

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