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工事中区域は「原則、利用不可」 ~としまえんと避難場所~

としまえんが閉園し、ハリーポッターのスタジオ施設計画を前提にした解体工事が始まってから4か月が過ぎました。しかし、懸案であった避難場所の取り扱いは、いまだ宙に浮いたままのようです。9月に入って解体工事が始まり、約6万人を対象とした避難場所が使えなくなっているのではないかという懸念、不安が地域からも出されましたし、議会でも大きな議論がありました。私自身もこの議論に深く関与し、このブログでも何回か取り上げてきたところです。
さすがに、放置できないと考えたのでしょう。最初は責任を押し付けあってきた都と区は対策の検討に入り、敷地の所有者である西武鉄道などとも協議をし、9月末にようやく鍵の取り扱いについての了解を取り付けました。しかし、たとえ鍵を開けられるとしても、そもそも工事区域のどこに、どのくらいの人が避難できるのかが整理されなければどうしようもありません。

避難場所をめぐる議論の経緯は以下の記事をご参照ください。
「としまえん」と防災 ~後回しにされていないか? ~ 
「避難場所」はどうなったのか? ~区議会でのやり取りから~

旧としまえんは、避難場所としてどのように指定されていたか。あらためて確認してみます。

これが都の指定一覧の中のとしまえんの部分です。避難対象人口、つまりこの場所を避難場所として指定されている人口は63,669人。そして、避難有効面積が97,668㎡となっています。避難有効面積というのは、避難のために利用できる面積という意味合いです。実は、としまえんを避難場所として指定するにあたってこの避難有効面積はどうやって算出したのか? ずっと疑問でしたが、都から情報公開請求で取りよせた資料で、だいたいの考え方、積算の根拠が分かってきました。

避難有効面積は、おおよそこんな考え方で算出していきます。
①そもそも避難場所に適さない区域を除く
②避難場所として利用できる区域についても、条件によって有効面積として積算できる割合を定める
③対象区域の地形、土地利用状況、建物の配置などを調べ、上記①、②に沿って有効面積を計算し積み上げていく
こんな流れです。例えばそもそも面積が5haに満たない土地は除外。鉄道敷地や幅20m以上ある河川区域も除外。一段の空地の外周部にある急斜面も、避難区域から除外されます。区域に含まれたとしても、例えばまっさらな空地と樹林のある場所、建物が近接したところなど、それぞれによって利用可能率が定められています。例えば、樹林50%、駐車場50%…といった具合です。主な利用可能率をまとめた表を紹介しておきます。

避難場所指定に関する『実務者手引き』より

この表を見ると、例えばプールは0%です。つまり、避難区域には入っていても、有効面積としてはカウントされません。遊園地の工作物も避難面積としては有効とは認められません。この『手引き』の中には、工事場所に関する考え方も明示されています。こう書かれています。

建築等の工事中の区域は、原則として利用可能率は0%とする。
解説 一般的には、塀などで囲まれた工事区域内は、段差、重機及び建築資材等があり、避難することが難しい状況であると考えられる。そのため、原則として、上記の利用可能率とする。但し、特別の事情がある場合は、個別に判断し、利用可能率を任意に設定できるものとする。

工事中の区域は「原則として利用可能率は0%」とはっきりと書いてあります。つまり、としまえんに引き付けていえば、現在スタジオ施設の工事のために離隔閉鎖されている区域は、原則としては避難場所としては利用できないのです。これは、とても大事なことです。
もちろん、ここには但し書きが付いていて「特別の事情がある場合は、個別に判断し、利用可能率を任意に設定できるものとする」となっていますから、工事中の区域が絶対に使えないということではありません。しかし、としまえん跡の工事区域に関してはこの但し書きを適用できるのかどうか、適用するとしたらどの程度が使えると判断するのか、この点の協議は、都の担当者の説明ではいまだに完了していません。

としまえんの避難有効面積に戻りましょう。都が開示した資料には、としまえんのどのエリアがどの程度避難に利用できるかを検討するための基礎となった台帳が含まれています。こんな図面です。

ちょっとわかりにくいと思いますが、なるほど、としまえんと一言で言っても一つ一つの区域で避難に使えるか、また使えるとしたらどのくらい使えるかを検証したんだなということはよくわかります。そしてもう一つ、やはりどう見ても石神井川の北側の方が避難に使える空間が大きく広がっていることは間違いないということも。

その石神井川北側のエリアに建築面積だけで3.2haを占めるという巨大な建物を建てるスタジオツァー計画が、これまでのとしまえんが果たしてきた避難場所としての機能を大きく制約するものであることは明らかです。そもそも建物は、避難場所としては機能しないのです。

「避難場所は、公園、緑地、広場、集合住宅及び学校等のオープンスペースにおいて、延焼火災が鎮火するまで一時的に待機する場所です。そのため、原則、建物の中を使用することはできません」(都公式サイト「震災時火災における避難場所及び避難道路等の指定」より)。

川の南側に抜本的に手を入れ、例えばプールを除却し、樹林を伐採する等の手当てをすれば、北側で失われる有効面積を取り戻すことはできるかもしれません。しかし、南側のこのエリアが都立公園として開園されるのは、都の説明では2029年度(令和11年度)、つまり10年後です。
避難場所は、いったいどこに行くのでしょう。としまえんは廃園になった、そのあとには「防災」をテーマとした都立公園が整備されるはずだった、一帯は広域的な防災拠点になるはずだった…それなのに、これまでのとしまえんが担ってきた最低限の防災機能である「避難場所」すら、当てもなくさすらい、行き場を失おうとしています。
公園整備が段階的に進められるべきものだとしても、その段階ごとにどのように防災機能が担保されるかをきちんと検討し整理することは、整備計画の大前提であるはずです。そして、この整備計画に基づいて初めて、大規模な民間の開発計画の是非、適否は判断されなければなりません。いつも繰り返していますが、「順番が逆」です。命にかかわる「防災」よりも一民間の開発計画が優先される事態は、あってはならないことです。

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