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池尻成二事務所 〒178-0063 練馬区東大泉5-6-9 03-5933-0108 ikesan.office@gmail.com

保健所長会の「緊急提言」

昨年末、全国保健所長会が国に対して『緊急提言』を行いました。厚生労働省のコロナ対策の専門家会議(新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード)の資料の中で紹介されているものの、保健所長会のサイトには掲出されていないようです。コロナ対策の第一線に立つ保健所の現場の状況を踏まえた『提言』であり、広く共有され検討されるべきものと思いますので、そのまま転載することとします。
   →全国保健所長会のサイトは こちら
   →『提言』原資料は厚労省アドバイザリーボード会議資料(こちら)の第17回・資料2-4参照

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策における緊急提言

厚生労働大臣 様 2020 年12 月8 日
全国保健所長会

新型コロナウイルス感染症における感染拡大の現状と課題をまとめましたので、それに関する緊急提言を申し上げます。保健所は地域における健康危機管理の拠点ですが、医療機関や消防警察などと異なり、通常の職員体制は24 時間交代制ではないにもかかわらず、災害時に準じた対応を余儀なくされています。2020 年2 月1 日の指定感染症の指定以降、数カ月にわたり危機的な状況が継続していることを以下の現状とともにお伝えいたします。この状況をご理解いただき、喫急に国が主導して対応方針を定め、都道府県へ呼びかけていただきますよう、具体的な提案を申し上げます。

現状と課題

<感染者の急増>
・都市部での感染拡大が著しく、周辺部をはじめとして、それ以外の地域にも確実に感染が拡大しつつある中で、地域による対応の差が課題となっている。
・入院や宿泊施設が逼迫し、自宅療養者が現在の感染者の半数を占める地域がある。このため自宅療養者への健康観察、生活支援等の保健所の業務が急増している。
・感染が拡大していない地域でも、感染者の流入によりクラスターが発生するリスクがある。一旦クラスターが発生すると感染が拡大していない地域ほど、保健所業務が急増し対応困難となる。
<高齢者の課題>
・高齢者の新型コロナウイルス感染症患者で、コロナは軽症でもコロナ以外の治療を要する合併症がある場合、その他疾患の医療を含む入院調整が困難である。
・高齢者は介護度が高いと、重症病床(ICU/人工呼吸器)での医療が困難である。
・高齢者は軽症でも宿泊療養が困難で、施設療養および自宅療養が増加している。
・施設療養において、感染症対応可能な看護・介護等の応援要員がいない。
・自宅療養において、感染対応が可能な訪問看護・訪問介護など支援者がいない。
<保健所業務の逼迫>
・感染拡大地域では、感染者の医療調整、自宅療養者の健康観察及び生活支援、積極的疫学調査及びそれに伴う濃厚接触者の検査、高齢者施設等への拡大的対応等の相乗的増加により、業務の逼迫状態にある。
・対応職員の増員を図っても自治体内外の応援や外部委託先の人材が限界に達し、業務量の増加に追い付かず、過重労働の連続になっている。
・感染者が増加する地域においては、対応の重みづけや優先順位を定めて業務の軽減化を行わなければ、保健所体制が崩壊する。

緊急提言

 地域の感染拡大状況によって新型コロナウイルス感染症対策における対処方針を変更可能とする。つまり、感染拡大の状況は地域により異なるので、現行の指定感染症(2類相当以上)の運用を、全ての感染者に対応することが困難である地域(例えばステージ3相当以上)においては、感染症法上の運用をより柔軟に対応すること等を、以下に提案する。

1.発生届様式の変更 (政令改正が必要)
 感染拡大地域では入院治療が必要な患者への対応を即時に判断し、優先させる必要があることから、発生届様式に以下を追加する。入院が必要な病状や入院による処置の必要性については、診断した医師の判断が重要であることから、発生時に以下の情報を即時に得ることが望ましい。
・入院治療の必要性の有無欄(コロナ・他疾患)及び診察医の意見欄
・基礎疾患の有無欄
・血中酸素飽和度の記載欄

2.ステージ3相当以上の地域における感染症法の運用 (都道府県の判断)

感染拡大地域においては、都道府県の判断により、①~④に掲げる感染症対応を認める。

①入院勧告は入院治療が必要な患者等に限定
・直ちに対応する必要がある患者 : 入院治療が必要な患者(診察医の判断)
・感染拡大を抑えるために必要な集団に属する患者 :高齢者及び障害者施設(入所/通所)利用者について、施設等での感染拡大防止が困難な場合
②宿泊療養の対象を75 歳未満に拡大
・75 歳未満であって医師が入院治療不要と判断した場合は宿泊療養の対象とする
・高齢者が利用しやすい宿泊可能な療養施設を確保する(ビジネスホテルタイプではなく、介護等の支援が可能な環境の提供)
③積極的疫学調査の重点化
感染拡大時には、保健所は生命の危険や医療崩壊に繋がる集団発生の予防を優先として、保健所の業務ひっ迫の状況に応じた優先順位に基づいて重点的に対策を実施する。
○積極的疫学調査の対象
(①②はクラスターが発生した場合は、最優先する。)
 ①医療従事者、入院患者
 ②高齢・障害施設従事者、高齢・障害者施設利用者
 ③高齢者や基礎疾患を有する家族や同居者
 ④接待、会食、興行等での感染予防対策が不十分な集団行動を共にした者
 ⑤保育・教育機関における従事者、児童生徒
 ⑥その他、事業所における勤務者
 ⑦感染源探求のためのさかのぼり調査
○接触者検査の対象や健康観察等は以下のとおりとする
・従事者は入所者等に直接接触する職員に限定する。
・重症者の発生が少ない施設や集団感染の恐れが少ない施設等においては、症状発現時に検査することとし、健康観察及び外出やサービス利用について自粛を要請する。
④行政機関による濃厚接触者の経過観察期間の短縮と簡略化
 潜伏期の中央値が5~6日であることを踏まえ、濃厚接触者の発病の有無の確認を最終接触から例えば7日目に確認し、健康観察期間を短縮するなど柔軟に対応する。また、健康観察期間内の体調変化および終了時の確認を自主的に保健所へ申し出てもらう(アプリ利用・受動可)。なお、発病リスクが高く発病した場合、集団への影響を及ぼす恐れのある場合は、従来通り14 日間の経過観察を集団の管理者等の協力を得て実施する。
*CDC による行動自粛期間(10 日間)の推奨を参考とする。

3.医療施設および介護福祉施設等へ感染対策支援 (都道府県の判断)
 高齢者や障害者である感染者が、感染対策のうえ介護・福祉施設で療養する場合は、当該施設へ介護職や看護職の支援およびPPE の補充を確保(または介護報酬を感染加算など)する。

4.感染者の自己負担の軽減(医療費及び生活費)
 入院以外の医療費や療養費および介護費用について、感染症法上の適用以外の自己負担分を行政(国)が補助する。結核の通院医療費や要介護高齢者等における任意入院治療等を参考に他の公費負担制度の活用を考慮する。

5.年末年始の検査および医療体制の確保
 行政検査の実施について、年末年始などの長期休暇や祝休日には全国的に、人の移動も考えられ検査の需要も高まることが考えられる。
① 保健所や地方衛生研究所だけでなく、民間検査機関へのPCR 検査体制を確保する。
② 都道府県単位で受診相談・医療調整が円滑に行われる体制を確保する。

国への要望

・現在の「全国的に流行期である保健所の感染症対策」を早急に示すこと
・迅速なワクチン接種体制の構築を進めること
・指定感染症としての対応を検証すること
 現時点で、判明している「新型コロナウイルス感染症」の概要について、我が国の情報を整理し、国外の対応策も参考にした上で、改めて本疾病についての疾病概念の認識を国民及び保健医療関係者に示すこと。
 流行の終息が見えない中で、指定感染症の指定解除の条件や時期について展望がないことは、保健所職員や医療従事者の健康障害や意欲の限界を生じ、感染拡大地域のみならず、全ての地域の保健所における業務遂行が不可能となる事態も危惧される。

都道府県等保健所設置自治体への要望

・全庁的な新型コロナウイルス感染症対策の推進に向けた周知啓発
 保健所設置自治体(都道府県等)は、地域全体の流行状況と管内保健所の機能を考慮し、保健所単位の創意工夫を超えて、狭義の感染症対策にとどまらず、全庁的な政策として行うことが望ましい。感染拡大地域をはじめ、既に実施している自治体も多いが、以下に示す保健所以外の機関と協力する事例を各都道府県に周知し、地域の実情に応じて推進するよう啓発されたい。新型コロナウイルス感染症の今後の流行や集団発生を想定し、特に、感染症患者の発生や具体的な患者対応を経験していない地域の保健所の体制整備を考慮すること。

1) 行政検査について
・職場や学校などの接触者検体採取(出張検体採取)
医師の指示のもと保健師や保健所医師以外の医療職が対応、または学校・職場の嘱託医(産業医・學校医)を中心に採取、または地元自治体の協力、または幼児・施設高齢者の鼻咽頭採取へのネットワーク医師の協力など
・高齢者施設利用者等に関する検体採取
嘱託医等日頃から連携している医療機関の医師による検体採取
・保健所が採取した接触者検査の委託
衛生研究所のみならず、県が委託契約した健診団体、民間検査会社、病院などで検査
・PCR センター協力医師に対する感染時の休業補償制度(診療・検査医療機関にも拡充)
2) 休日診療体制について
・休日コロナ対応病院(外来)の輪番制(年末年始を含む)
発熱患者等が二次救急指定医療機関に集中し、救急医療に支障をきたすことがないよう、二次救急輪番制の当番病院以外の病院でコロナ外来対応の輪番制を組む
3) 入院措置・宿泊療養の調整等
・全面的に府県の調整本部が入院および宿泊療養の府県全体の調整を行う。
・療養施設への民間業者の搬送
4) クラスター対策における保健所支援チーム、県クラスター班
・クラスター発生等、繁忙期における保健所支援のために、県庁の保健師、薬剤師による輪番制の保健所支援チームを結成。
・地衛研の疫学担当のFETP 等1~2名により、クラスター発生時の疫学調査支援
5) 介護事業所間職員応援派遣事業
・介護事業所でクラスターが発生した場合に備えて、圏域の介護サービス事業者協議会、保健所、市が連携して①応援職員派遣②代替サービス提供支援を実施するため、地方事務局が中心となり、体制を構築し、県の事業実施要綱が策定された。
6) 所内体制の非常事態対応
・土日祝を含めて全所員による担当体制、
・BCP の配慮を行い不急な保健所業務の停止
・大学等研究機関からの公衆衛生専門家の協力(自治体と大学との協定等)
・HER-SYS 代行入力等は、保健師以外の職種や他部局応援職員による業務担当、県庁や管内自治体からの保健師および職員を派遣
7) 苦情処理
・クラスター発生時や自治体職員が陽性となった場合など、市民からの苦情への対応が、保健師の貴重な時間を浪費し、保健師の精神を蝕んでいることに留意。総務部で対応すべきものもあるため、総務部職員を保健所に派遣し、苦情処理に対応させた。

コメント

  1. 蟹澤一夫 より:

    大した力もない、国に支援してもらっている夫婦です。でも池尻先生、僕は余命宣言されて、余計生きて、家庭、家内、困っている人、僕でも、出来る事目一杯やりたくなりました。先生と知り合い、とても光栄です。僕みたいな、ろくでなし、でも、今心は違います。少しでも、小さな行動でも、僕達より困った人達に何かしたいです。先生しかそんな事目一杯区民にする人いません‼️宜しくお願いします。