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道路が「主役」!?  ~ゆがむ練馬の“まちづくり”(その3・完)~

これまでも、練馬区内のあちこちで、さまざまな時期に、「道路」をめぐる議論が巻き起こり、住民の運動が広がったことがあります。今も、いくつかの道路計画が住民の強い反対を受け、外環の2や外環・青梅街道インターチェンジ計画では裁判にまでなっています。しかし、「道路が主役」と公言する前川区政のもとで、もはやあれこれの路線の問題ではなく、練馬区全体のまちづくり、練馬のまちの将来像という基本的なところで、私たちは「道路」と向き合わなければならないところに来ています。
立派な道路ができれば、みどりの確保も防災も進む――100歩譲ってこれが事実だとしても、道路は地域に大きな傷跡を残していきます。70万を超す人々が暮らし、たくさんの生活が根付き、人のつながりやコミュニティが育まれてきた練馬のまちで、現道もないようなところに大型の道路を作っていくことのリスク、デメリットを、私たちはしっかりと考えなければなりません。しかも、道路はただではありません。それどころか、道路は大変な金食い虫です。財政という面からも、新しい道路に何十億、何百億、時にそれ以上の税金をつぎ込むべきなのか、子育てや福祉よりも道路を優先すべきなのか、真剣な反省が必要です。
みどりについて言えば、大型道路が生み出すみどりはせいぜい街路樹です。それは、こぎれいな町並みには資するかもしれませんが、生態系としても、みどりの「質」の面からも、景観からも、きわめて限界のあるものです。防災についてもしかりです。防災を真剣に、しっかりと取り組むのであれば、道路よりも優先すべきこと、やるべきことはたくさんあります。

「外環の2」という道路があります。区も都も、この道路の「効果」をあれやこれやと言い立ててきました。しかし、結局、道路に付属して生まれる緑はわずか1m幅の街路樹帯、そしてこの街路樹帯の全面に緑ができたとしても、道路によって直接、失われる緑を量的にカバーするのがやっとなのです。しかも、「外環の2」の新青梅街道から前原交差点までの3km区間を整備するために、立ち退きとなる家は400戸。必要な税金は320億――都は、こう試算しています。これだけの負担とリスクを負ってまで、あえて新しい道路を造る必要性があるとは、私にはとうてい思えません。
区長は、道路は「環境、防災、景観などの機能も担っている」と言います。しかし、緑や防災、景観などという面からみて、道路は決して最善・最優先の手段ではありません。そもそも、道路は道路。モータリゼーションがこれから始まろうかという半世紀前ならいざ知らず、今、なぜ道路が必要なのか? みどりや防災は大切な課題であるとしても、その手段がなぜ道路でなければならないのか? 責任をもって説明されるべきは、まず、この点です。

区長の新しい「ビジョン」には、区民を苦しめている貧困や孤立、差別や格差に対する関心も問題意識もまったく読み取ることができません。保育所の「待機児解消」は、言葉自体が消えてしまいました。きれいに飾られた「ビジョン」ですが、人の温かみや優しいまなざしを欠いた、冷たい文字が並びます。「人」か「道路」か。大型道路中心の「まちづくり」をこのまま進めてよいのか? 明日から始まる区議会議員選挙の大きな争点の一つです。

                池尻成二が見直しを求めている主な道路計画

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