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災害廃棄物とアスベスト(続)

 災害によって破壊され、あるいは使用できなくなった建築物等の廃材は、もしそれが建築物の解体等にともなって排出されたものとみなすことが出来るならば、焼却処理はできないし、収集・運搬の過程でも適切に管理されなければならない。これが、今のアスベスト規制法令の枠組みです。
 実は、この点で、そもそも災害によって廃棄物となった建材等は廃石綿等に関する廃掃法や大防法の規制を受けない、規制の対象外であるという見解を環境省が出しています。たとえば、「廃石綿が混入した災害廃棄物について」という文書です。

     ➠環境省「廃石綿が混入した災害廃棄物について」。環境省の公式Hp中、<東日本大震災への対応について>(こちら)のページに掲載されています

 この文書には、「参考」として、こう書いてあります。

1.廃掃法上の取扱いについて石綿が使用されていた建築物等が災害によって倒壊したことにより廃棄物として処理されることとなったものは、石綿建材除去事業(大気汚染防止法に規定する特定粉じん排出等作業に相当)に伴って排出された廃棄物ではないことから、吹き付け石綿等であっても、廃掃法施行令第2条の4第5号に規定する「廃石綿等」(特別管理産業廃棄物)には該当しないこと。

 つまり、災害によって廃棄物となった建築物等の処理は、大防法の規制のかかる石綿建材除去事業ではなく、したがってまた、それらの廃材は廃掃法が規制の対象とする廃石綿等には該当しない。こう書いてあるのです。また、この文書には

石綿の付着・混入が疑われるもの又は倒壊した建築物等であって石綿が付着していないことが確認できないものについては、リサイクルせず、焼却処分又は埋立処分を行う。

とも書いてあります。アスベストの焼却処理は、違法であるどころかむしろ公認されています。

 災害廃棄物に関する法解釈がこの文書の記載の通りであれば、清掃工場で廃石綿あるいはアスベスト含有建材が焼却処理されたとしても、それ自体は廃掃法等に触れる行為ではないということになります。しかし、本当にそうなのか。それでよいのか。もしこうした解釈が正しいのであれば、大規模地震等の災害の際に大量に排出されるに違いないアスベストは、いっさい法の規制を受けないということになります。それだけではなく、災害時でなくてもアスベストを焼却することが事実上、許容されていくことになりかねません。
 この文書は、環境省のホームページ上で昨年3月、地震の直後に出されたことはわかるものの、発出日の記載も、発出者の名前もありません。こんな文書で法解釈が定められていくのは信じがたいことですが、この問題をきちんと整理した公文書をいまだ他に見つけることが出来ていません。環境省には、ぜひあらためて見解を確認したい。そして、もし廃掃法等に災害時のアスベストを規制する条文がないのであれば、速やかに整備をしてもらいたい。そうでなければ、災害を理由に健康や環境を確保するための仕組みや規制が骨抜きにされていってしまいます。

 災害対策とアスベスト規制を法令上、あるいは実務上どう関連付け整理するのか。大きな宿題です。

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