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一部事務組合の「一般廃棄物処理基本計画」

 23区清掃一部事務組合が、「一般廃棄物処理基本計画」の改定作業を進めています。11月末に「原案」が公表され、今月23日までの期限でパブリックコメント(意見募集)が行われています。

東京二十三区清掃一部事務組合「一般廃棄物処理基本計画」の改定について 

 一組の基本計画については、現行の計画が策定された当時は基本計画だけでなく経営計画や財政計画も含め、区議会の所管委員会にていねいな経過報告があり、さまざまな議論が交わされました。しかし、今回の改定に関しては委員会への報告もほとんどなく、区議会が主体的に議論する機会は全くないままに来ていると言っても過言ではありません。よくないことです。改定原案は、徹底して議論されるべき大きな問題をいくつも内包しているからです。少しだけ触れてみます。
 一組の一般廃棄物処理基本計画は、一組が受け持つ事務、つまり廃棄物の中間処理(可燃ごみの焼却)を中心とした仕事を進めていく前提となる計画です。中間処理をどのように進めていくか。当然、それは処理されるべきごみの量をどう見込むかというところから出発します。
 「原案」のごみ量推計は、いくつかの前提、方法を用いて積み重ねられています。結論だけを言えば、現在の計画よりも2020年のごみ排出量見込みは年間で66万トンも下方修正されています。この数字が妥当なものかどうか(もっと減るのではないか)も大いに議論がありうるのですが、それはともかく、66万トンごみ量が減るということは、それ自体、たいへんな数字です。たとえば日量520トンの焼却能力を持つ練馬清掃工場の年間焼却量は約10万トン。板橋工場で約15万トンです(2008年度)。つまり、練馬や板橋の工場の4つ分、5つ分もごみが少なくなるというわけです。
 ところが、「原案」では、現在21か所ある清掃工場については、わずかに大田第一工場の休止を打ち出したのみ、他の工場については予定どおり建て替えるとしています。なぜでしょうか。なぜ、もっと工場を減らさない(減らせない)のでしょうか?
 そこにもいろいろな理屈が出てくるのですが、そのひとつに「焼却余力」の見直しがあります。搬入されるごみ量の変動を考慮して、現在の計画では、一日ごみ量の平均値の7%の余力を確保することとしていましたが、原案では、これを12%まで引き上げるというのです。7%から12%へ。5%は、一日の焼却能力としては15万トン近くになります。これで清掃工場一つ分です。現行計画と同様、焼却余力を7%にすれば、もう一つ工場が減らせるのです。ほんとうに12%もの余力が必要なのか。なぜこれまで7%でよかったものが12%に跳ね上がるのか。
 「原案」の説明は、とうてい納得できるものではありません。たとえば、「原案」では、昨年度12月のごみ量がたいへん多くなったことを根拠に、月変動に対応する余力を7%から9%に引き上げました。しかし、昨年は10月からプラスチックごみを可燃ごみとして収集する「サーマルリサイクル」が全面実施に移り、10月を境に可燃ごみ量は大きく増加しました。昨年12月のごみ量変動は、過年度のそれとは明らかに異なった要因を反映しているはずです。そうした事情を全く考慮せずに数字をはじき出すやり方は、計画の誠実さを疑われかねません。
 もうひとつ、今回初めて持ち込まれた週単位の変動を想定した余力という考え方も、なんとも不可思議な理屈です。年末年始の4日間、清掃工場は稼働を停止します。この間、ごみの受け入れも止まります。その分、年始明けは「回復」と言って、ごみ量がぐっと増えます。その年始明けのごみ量増に対応するためには12%の余力が必要だと、こういう理屈を持ち出してきたのです。
 しかし、焼却余力を考える際に、わずか数日の間のごみ量変動に対応できるようにすることがほんとうに必要なのでしょうか。何らかの対策が必要だとしても、バンカ(ごみの貯留槽)の調節や、収集運搬作業の平準化、持ち込みごみの搬入調整や、あるいはもっとストレートにいえば、年末年始の停止日数を削減すれば済む話ではないでしょうか。
 焼却余力をめぐる「原案」の記述は、恣意的でとってつけたような、そん印象すら受けます。まさか施設の必要性を正当化するためにつじつま合わせで理屈を弄んだなどということはないと信じますが、それにしては、あまりに説得力に乏しい“論理”が目立つのです。

 たとえばこんな具合です。そのほかにも、気になる点、納得できない点がいくつもあります。とくに、23区の財政への影響は、実はたいへん重要な論点です。いずれにしても、意見を出して、一組の説明を求めてみようと思います。それにしても、区議会でもしっかり議論しないといけませんね…。

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